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クリエイティビティーとは「課題を見つける力」だと思います

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川村真司の発想術「面白いアイデアは、適切な問いから生まれる」

インタビュー・テキスト:内田伸一 撮影:豊島望(2014/08/11)

かつてメディアクリエイター佐藤雅彦のもとで『ピタゴラスイッチ』に関わり、やがて海外のクリエイティブエージェンシーを巡る武者修行をしながら、音楽ファンにはSOURやandropの個性派MVで知られることになった異才クリエイター。現在はクリエイティブラボ「PARTY」の創設メンバーとして、多様なグローバル企業の広告キャンペーン、イベント空間演出などにも携わる。川村真司のそうした縦横無尽さは、言い換えれば常にスタイルを固定化させない、とらえどころのなさとも写る。そんな彼自身の本質を照らし出す、インスピレーションの素や原動力とは? ニューヨークから一時帰国した川村の本音に迫った。

なお彼は現在、KIRIN Hard Cidre(キリン ハードシードル)『Green Apple Museum』プロジェクトに、クリエイティブユニットmagmaとのコラボレーションで作品を出展中。同プロジェクトは、exonemo、西島大介、秋山具義、大野そらなどジャンルを超えたクリエイター18組が「青リンゴ」をテーマにオリジナル作品を発表する試みだ。ウェブ上での公開に加え、実展示を行うのも特徴(展示は8月10日で終了)。今回の出展作について、また物質感、アナログ感へのこだわりも聞くことができた。

PROFILE

川村真司(かわむら まさし)
クリエイティブラボ「PARTY」クリエイティブディレクター。数々のブランドのグローバルキャンペーンを始め、プロダクト、ミュージックビデオの演出など活動は多岐に渡る。『Rainbow in your hand』ブックデザイン、SOUR『日々の音色』『映し鏡』MVのディレクションなどその活動は多岐に渡る。主な受賞歴に『文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門最優秀賞』、『AdFest Design / Cyber グランプリ』『アヌシー国際アニメーションフェスティバルミュージックビデオ部門グランプリ』など。『Creativity』誌による「世界のクリエイター50人」や、『Fast Company』誌「ビジネス界で最もクリエイティブな100人」に選出。
PARTY

原点は、慶應大学の佐藤雅彦研究室。何かがわかった瞬間や、新しい気付きによって、頭の中のスイッチがパチッと入るときの快感みたいなもの。人がモノに対して興味を持つことの面白さを学びました。

―川村さんは、CMプランナー、MVディレクター、広告のクリエイティブディレクター、さらに個人での作品制作など多様なキャリアでもの作りをしています。その創造力の源は?

川村:原点という意味では、慶應大学の佐藤雅彦研究室ですね。そこで覚えたのは、何かがわかった瞬間や、新しい気付きによって、頭の中のスイッチがパチッと入るときの快感みたいなもの。「なるほど、そういう考え方もあるのか」「こういう見方があるのか」と感じる瞬間、人がモノに対して興味を持つことの面白さを学びました。これは今、僕が作りたいものにも直結していると感じます。けっこう左脳的で、ロジックで組み立てるのが好きなんです。誰にも依頼されてないけど、「こういう概念を示せたら」という設定をした上でそれにかなう表現を目指す。これは依頼仕事でも、個人の創作でも共通です。

―川村さん個人の初期作品に、パラパラ漫画の原理を拡張したような『Rainbow in your hand』があります。36枚の紙に印刷された内容はすべて同じだけれど、それを一気にめくると残像で3D的に虹が描かれる、というものでした。

『Rainbow in your hand』
『Rainbow in your hand』

川村:あれは、もともと自分でも好きなパラパラ漫画について、メディアとしての表現の可能性がもっともっとあるんじゃないか? と思ったのがきっかけです。だから僕にとってはアウトプットそのものより、その考え方を世の中に示せるかが大切でした。「ああ、本にもこういうとらえかたがあったのか」みたいなことですね。

―佐藤研究室時代には、佐藤さん監修のNHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』で、あの「ピタゴラ装置」や「アルゴリズム体操」に深く関わったそうですね。

川村:ゼミ入試の時点では、佐藤先生が何者かすら知らず、ただ友だちについて受けに行ったダメ生徒でした(苦笑)。後で聞いた話では、先生は「今はダメでも可能性がありそう」枠を設けていたらしくて、そこに入れてもらったみたいです。で、さすがに先生の仕事を知らなくてはと調べたら、僕の大好きだったCMの多くは佐藤雅彦作品だった。「コマーシャルが面白いんじゃなくて、この人の作品が面白かっただけじゃん!?」と思ったのを覚えています。

川村真司
川村真司

―佐藤さんのCMは『ポリンキー』『バザールでござーる』など、今も記憶に残るものが多いですね。研究室ではどんな課題のもと、勉強したのですか?

川村:常に世の中に出すのを目的に課題を設定して、みんなでアイデアを出し合うような作業を繰り返していました。『ピタゴラスイッチ』もゼミの課題から生まれました。「NHKで子ども向けに、ゼミでやっているような『考え方を考える』ような番組を作れないかという話がある」というので、佐藤先生のもとゼミ生みんなでアイデアを出し合いました。たとえば「プログラミングという、モニター上でしか見えないものの本質をアニメで伝えられるか?」とか。そういう課題に答えを出す中で、「ピタゴラスイッチ」や「任意の点P」といったコンテンツが生まれていった。でも、やっていくうちに僕が気付いたのは、そこで生まれる表現も面白かったけど、実は一番すごいのはその出発点になる佐藤先生の「課題の発見」だったんですよね。

―知らず知らずのうちに導かれていくような?

川村:課題自体がほとんど答えにもなっているというか、この課題に答えれば必然的に面白くなるというか……。そういう「枠組みの設計」が実は一番大事なんだと学びました。だから僕はよく、クリエイティビティーって何? と聞かれると「課題を見つける力」って答えるんです。前提になる枠組みが適切なら、答えも絶対面白くなる。それが究極の創造力かなというのがあって。後に関わることになったNHK Eテレ『テクネ 映像の教室』も同じ考え方です。まず「技法から映像をひも解くとどうなる?」という設計があるからこそ、後は個別の技法ごとに答えていけば必然的に面白くなるだろう、って。

川村真司

―それは広告界での仕事においても一緒ですか?

川村:基本そうですね。クライアントが本当は何を伝えたいのか、その課題を見つけるのが一番大事。彼らのほうが自分たちの商品やサービスへの知識も愛も深いので、そこから生まれた要望には真剣に応えつつ、でも同時にそれを疑いもする、というか。それが自分の義務かなとも思っています。たとえば、「この課題は、今回の条件=30秒のCMとは別のやり方が適しているのかも」と思うとき、僕はCM案と一緒に「オモチャを作りませんか」「30分の生放送番組が良いのでは?」といった別案も出すタイプです。それを喜ぶ人もいれば迷惑がる人もいるのですが(苦笑)。相手がそうやって課題を一緒に探すことを喜んでくれるときは本当にやりやすくて、そういうときはいいものが生まれることが多い。これはMVでも一緒で、僕は広告でいうオリエンシート(発注主が広告制作側に依頼案件を伝える資料)が、楽曲の世界観や歌詞に近いものと感じています。そうして枠組みが決まれば、後は全力でそれに面白く答えようと頑張るのみです。


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