隣国の外相同士が、これほど長い間まともに会談できなかったことに、改めて驚かざるを得ない。

 岸田外相が、ミャンマーでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の会議にあわせ、中国の王毅(ワンイー)外相、韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相と個別に会談した。

 日中外相会談は第2次安倍内閣になってからは初めてで、実に約2年ぶり。日韓は約10カ月ぶりである。

 ふたつの外相会談とも、まだ実現していない日中、日韓の首脳会談を意識してのものだった。たった一度の外相会談で道筋がつくものでもなかろうが、一歩前進であることは確かだ。首脳会談に向けた双方のいっそうの外交努力を求めたい。

 日中両政府が念頭に置くのは、11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際の安倍首相と習近平(シーチンピン)国家主席の会談だ。中国が各国首脳を迎えるホスト役を務めることから、2国間の首脳会談を設定しやすいからだ。

 7月には福田康夫元首相が訪中し、習主席とひそかに会談。日中関係の改善で一致し、福田氏は首脳会談実現に向けた安倍氏の意欲を伝えたという。

 中国の台頭に伴い、アジア太平洋地域では、経済と安全保障の両面で新たな秩序がつくられようとしている。

 自由貿易協定(FTA)や環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済協定をどうつくりあげ、発展させていくか。安全保障面では、北朝鮮の核・ミサイル開発への対応ばかりでなく、領土・領海をめぐる南シナ海での中国の強硬姿勢にどう対処していくか。

 米国や韓国が戦略対話などを通じて積極的に中国とかかわっているのをよそに、地域の大国である日本だけが「対話のドアは常にオープンだ」と言っているばかりですむはずはない。

 おととしの尖閣諸島の国有化をきっかけに、東シナ海では自衛隊機が中国の戦闘機に異常接近される事態まで起きた。対話は急務である。

 これから終戦記念日の8月15日や満州事変の発端となった柳条湖事件の9月18日など、戦争の惨禍や歴史に思いをはせる季節がやってくる。ここでまた関係改善の機運に水を差す事態が起きることは、何としても避ける必要がある。

 首相はじめ日本の指導者は靖国神社への参拝は慎まねばならない。また中国も、日本の過去の行為をいつまでも国際的な宣伝の材料に使うべきではない。

 双方の自制と努力を望む。