五十嵐聖士郎、藤森かもめ
2014年8月12日07時00分
京都大学が京都市内の商業施設に人物照合用の複数のカメラを設置し、約3年8カ月間にわたって買い物客らに無断で撮影を続けていたことが朝日新聞社の調べでわかった。京都大が国の補助金を受けて参画した研究プロジェクトで、大学から報告を受けた文部科学省は8日、文書で注意した。
プロジェクトは文科省の公募事業で、公共空間で特定の人物をカメラで追跡する技術の確立を目的としている。
無断撮影が明らかになったのは京都市中京区にある複合商業施設「新風館」。京都市営地下鉄烏丸御池駅前にある3階建ての建物で、飲食店や衣料品店、スポーツジムなど30店舗・施設が入り、年間約150万人が訪れる。京都大学術情報メディアセンター(同市左京区)はこの館内に計34台のカメラを設置し、2010年9月から来館者を撮影。服装の色などで人物を見分け、最長約1時間にわたって行動を追っていた。
撮影を始める前に、センターは新風館側と覚書を交わし、実験の概要やセンサーの種類、責任者名、連絡先――などを記した表示を館内に掲示することを約束し、来館者のプライバシーに配慮することにしていた。しかし、実際は朝日新聞の取材をきっかけに今年3月下旬に無断撮影が発覚し、4月22日に館内2カ所に「カメラ動作中」の紙を貼り出すまで、何も掲示していなかった。
センターによると、07~09年度にも別の実験で新風館内でカメラ撮影しており、その際は来館者に内容などを知らせる掲示をしていたが、今回は撮影開始前のシステム調整などに手間取っている間に掲示を忘れてしまったという。
プロジェクトには、京都大のほか、東京大や名古屋大、電子機器大手のオムロンの子会社「オムロンソーシアルソリューションズ(OSS)」が参画。3大学と責任機関のOSSに計約4億3千万円の補助金が支出され、このうち京都大には約1億500万円が渡るという。
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