渡辺JBIC総裁:円は急激に安くならない
8月11日(ブルームバーグ):国際協力銀行(JBIC)の渡辺博史総裁(元財務省財務官)は、1ドル=100円台前半で推移している為替水準について、日本企業にとって問題のあるレベルではないと述べるとともに、当面は急激に安くならないとの見方を示した。
渡辺氏は7日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「米国の金融緩和の縮小ペースが遅く、長期金利が上がる動きもかなりゆっくりになる」と述べ、「円が高齢化に伴う潜在成長力の低下で120円や130円になるのはかなり先になる」と予想した。
渡辺氏は新興国に流れていた資金が一気に米国に逆流すれば債券の価格が上がり、金利が低下するため、資金の流れが限定的になると指摘。その一部が円やスイスフランなどの安定した通貨に「途中下車」し、日米の金利差拡大による動きを相殺するとみている。
円は対ドルで、2011年10月31日に1ドル=75円35銭の戦後最高値を記録するなど歴史的な円高が続いていたが、第二次安倍政権発足以降は19%下落。足元は102円台前半で推移している。ブルームバーグが金融機関からまとめた最新の為替予測(中央値)では、15年から16年にかけて111円台を付けるものの、その後は100円台に戻すとみられている。
足元の為替水準についても「日本企業も100円ぐらいであればコストを賄えるほど生産効率を上げており、これで困っている人が誰もいない状況になっていることは間違いない」と指摘。
背景について渡辺氏は、円高時に企業が生産拠点を海外に移転したことや部品の海外からの輸入を進めることによって「耐性」をつけたことから、「為替がどちらに向いても関係なくオフセット(相殺)できる仕組みがかなり進んでいる」との見方を示した。
その上で、「大企業の去年の決算は円安による為替差益が大きく出てプラスになったが、今年も利益が出ている。100円前後の上下5-10円の範囲で動いてもあまり影響がない」と語った。
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更新日時: 2014/08/11 14:38 JST