誤報を認めないで逃げた朝日新聞が混乱を拡大した
91年8月11日に、植村氏は「女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦」が名乗り出てきたという記事を書いた。これは韓国メディアより早い「国際的スクープ」だったが、それは彼の義母が慰安婦訴訟を支援する「太平洋戦争被害者遺族会」の幹部だったからだと言われている。
今回の検証記事は、この点について「元慰安婦の証言のことを聞いた当時のソウル支局長からの連絡で韓国に向かった。義母からの情報提供はなかった」という植村氏の弁解を載せているが、なぜソウル支局長はこの「スクープ」を自分で書かないで、大阪本社の社会部に知らせたのだろうか。
NHKも同じ頃、慰安婦として名乗り出た金学順の話を放送したが、彼女は「親に売られてキーセン(妓生)になり、養父に連れられて慰安所に行った」と証言した。植村氏にも同じ話をしたはずだが、彼はなぜ「挺身隊の名で連行された」と嘘を書いたのだろうか。
検証記事によれば、植村氏は「最初はキーセンのことは知らなかった」と弁解しているが、91年12月に金学順が日本政府を相手に訴訟を起こしたとき、キーセンの件は訴状に書かれていたのに、植村氏は翌年1月にまた「強制連行された」と書いた。
彼は「キーセンだから慰安婦にされても仕方ないというわけではないと考えた」と弁解しているが、これは強制連行の根拠にならない。彼の弁解は不自然であり、それを裏づける証拠もない。元慰安婦の証言と同じだ。
義母からの情報で「スクープ」を書き、単なる人身売買では大きなニュースにならないので(金学順とは無関係な)強制連行と結びつけたのだろう。これは単なる誤報ではなく、意図的な捏造と言わざるをえない。
さらに問題なのは、こんな明白な事実誤認を朝日新聞が20年以上、ごまかしてきたことだ。97年3月に慰安婦問題を検証した記事でも、吉田の話は「真偽不明」とし、その後の社説でも、肝心の事実関係をごまかしたまま「強制連行は枝葉の問題だ」などと逃げてきた。
今回の特集でも、1面では「女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質」だとして、ボスニアの強姦事件を引き合いに出しているが、慰安婦は強姦ではない。戦地で頻発する強姦を防ぐために、軍が慰安所を管理したのだ。単なる娼婦を「戦時性犯罪」と呼ぶのはナンセンスである。
16面の記事では「朝鮮や台湾では、軍による強制連行を直接示す公的文書は見つかっていない」と明記しながら、「自由を奪われた強制性」はあったという。「強制性」とは何か。民間の人身売買でも借金のかたに売られることが多かったので、自由は奪われる。朝日新聞の論理で言えば、政府は吉原の元娼婦にも謝罪する必要がある。
「他社も強制連行を報じた」と朝日新聞は見苦しい言い訳をしているが、この問題がこじれた原因は、92年の朝日の大誤報で首相が謝罪したことだった。彼らは訪韓の政治的タイミングを狙ったのだろう。「あれは偶然だ」という朝日新聞の弁解を信じる人はいない。