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ほんの1滴、痛くない血液検査:注射嫌いの女子大生が挑んだ「再発明」

 
 
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INTERVIEW BY CAITLIN ROPER
PHOTOGRAPHS BY MATHEW SCOTT
TRANSLATION BY SANAE AKIYAMA

Theranosのナノテイナーは、1滴分の血液しか入らない。30ものラボテストはこの少量のサンプルで事足りる。

Theranosの革命は、検査の透明化と低価格化という問題解決なしにはありえなかった。同社の検査価格は標準的なメディケアメディケイド返済額の50%未満であり、また他社が表に出すことのない検査価格を、ウェブ上で惜しみなく公開している(血液型2.05ドル、コレステロール2.99ドル、鉄分4.45ドルなど)。もしもアメリカの全検査機関が同価格の検査を導入するならば、10年間でメディケアが980億ドル、メディケイドで1,040億ドルを節約できる計算になるという。

以下、エリザベスへのインタヴュー

──臨床検査会社を立ち上げた際の目標は何だったのですか?

状況によって変わる、そのとき最も重要な健康情報を人々に提供したかったのです。ひとつめの目標は、何らかの医療的処置をする前に患者のコンディションを適切に提示できること。そしてもうひとつは、彼らの健康を改善するための情報へのアクセス権限を提供することです。

アメリカでは毎年十何億という検査が実施されていますが、そのうちあまりに多くが緊急救命室で行われています。ですが、もし病院に運び込まれる前に血液検査が終わっていれば、診断は早く済むでしょうし、病院に着くまでに処置できる余地があるかもしれない。検査の障壁となるものを取り去ることで、臨機応変な対処ができるようになるのです。

──19歳という若さでTheranosを立ち上げるに至ったモチヴェイションは、何ですか?

注射針が怖いんです。唯一怖いものが注射針ですね。それ以外の理由としては、人生をかけてヘルスケアシステムを改善したいと思っていたことが挙げられます。愛する人が大病を患ったとき、病気に気づいたころにはもう手遅れだったということがあるでしょう? そんなときは、本当に心が痛みます。

──たしかに注射針が怖い人は多いですよね。

採血のプロセスは、検査を阻む大きな障壁となります。調査によると「注射針が怖い」「何か問題があるかもしれないと心配になり、宣告されるまでの待ち時間が不安」といった理由で、多くの患者が検査を拒んでいることがわかっています。わたしたちは血液検査を、気軽にできて結果がすぐにわかる便利なサーヴィスにしたかったのです。

──早さにこだわる理由を教えてください。

わたしたちのサーヴィスでは、平均4時間以下で結果が出ます。例えば、定期検査を受けなくてはならない患者がいるとしましょう。朝のうちにウォルグリーン薬局で検査をしておくと、お昼に病院で医者に会うまでには結果が出ているわけです。それに、少量の血液サンプルだけですべての検査ができるので、採血管に何本も採血する必要はないのです。

──医者が検査結果を見て、ほかに調べたい項目があったとしても、再度採血する必要はないということですか?

その通りです。医師からの「もし基準値を超えたら再検査」といった要望などにも、以前採取したものと同一のサンプルを使って素早く結果を出すことができます。

──pH値などの従来のテストは素早くできるでしょうが、細菌やウイルスを培養しなくてはならないものなら数週間かかることもあるでしょう。Theranosの検査でもこのように時間がかかるものはありますか? それともすべて4時間以内に結果が出るのでしょうか。

すべて4時間以内です。検査工程の高速化を図るために、分析方法やテスト方法を開発しました。ですから培養なんてものは必要ありません。細菌やウイルスの検査では、従来の方法の代わりに病原体のDNAを測定します。そうすることで、かなりの時間を短縮できるんです。

 
 
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