(朝鮮日報日本語版) 【コラム】大統領をめぐるうわさ
朝鮮日報日本語版 8月10日(日)15時52分配信
大統領をめぐるうわさは、世間の人々は皆知っているが、当の大統領本人は知らないに違いない。
記者がそう思ったのは、7月7日、大統領府秘書室が国会運営委員会で行った業務報告がきっかけだ。旅客船「セウォル号」沈没事故が発生した日の午前10時ごろ、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が書面で初めて報告を受けてから中央災難(災害)安全対策本部に出向くまでの7時間、対面での報告も、大統領主宰の会議もなかったということが判明した。当時、野党・新政治民主連合の朴映宣(パク・ヨンソン)院内代表と大統領府のキム・ギチュン秘書室長はこんなやりとりをした。
「大統領は執務室にいたのか」「居場所については私は知らない」「秘書室長が知らなくて、誰が知るのか」「秘書室長がいちいち、一挙手一投足を全て知っているわけではない」
大統領のスケジュールをリアルタイムで把握できないというわけだ。後になって知るという。しかし、問題の日は大惨事が発生した日だ。当然「大統領は今どこにいるのか」と尋ねたり、探したりしてしかるべきだ。
キム室長が「私は知らない」と言ったのは、大統領を守ろうとしたからだろう。だがこれは、秘書室長にも隠したい大統領のスケジュールがあるという意味にもとられかねない。世間では「大統領はあの日、ある場所で誰かと密会していた」といううわさが流れた。いっそのこと「大統領の居場所について公の場で話すのは困る」と言っておけば、こんな状況にならなかったのではないだろうか。
大統領をめぐるうわさ話はつい最近まで、証券業界の情報紙やタブロイド紙で取り上げられるようなものだった。良識のある人々は、そのようなことを口にすること自体、自らの地位を下げるものだと考えていた。誰かが話題にしようものなら『そんないいかげんな話はやめろ』と止めたものだ。
そんな扱いをされていたうわさ話が、7日の国会でのやりとりをきっかけに、一般のメディアでも取り上げられるようになった。プライベートな場での数人の人々の雑談の中でそのような話が出るのではなく、「ニュース」として登場しているのだ。
さらに、うわさ話に登場していたチョン・ユンヒ氏が離婚していたことまで判明し、事態はさらにドラマチックになった。チョン氏は財産分与や慰謝料の請求をしないという条件で、妻に対し婚姻期間中の出来事について「秘密の維持」を求めた。故・崔太敏(チェ・テミン)牧師の娘婿に当たるチョン氏は、朴大統領が国会議員時代に秘書室長を7年間勤めた。チョン氏は最近、あるメディアとのインタビューで「私の利権への介入や(朴大統領の弟)朴志晩(パク・チマン)氏に対する尾行疑惑、裏での活動などについて、政府が公然と調査をやればいい」と大声で怒鳴った。
世間の人々は真実かどうかを抜きにして、このような状況を大統領と関連付けて考えた。以前なら、大統領を支持する勢力は烈火のごとく怒っただろう。支持者ではない人たちも「言及する価値すらない」と思ったに違いない。ところが今は、そのような常識が崩壊し、理性的な判断ができなくなっているようだ。
国政運営で高い支持率を維持していれば、うわさが流れることもないだろう。大統領個人に対する信頼が失われたことで、あらゆるうわさが流れているのだ。それは身体の免疫力が落ちたとき、鳴りを潜めていた病原菌が活発になるのと似ている。
これは大統領として、非常に深刻に受け止めなければならない。なぜ、どこで免疫力が低下したのだろうか。現政権ほど国政をめぐるアジェンダ(検討課題)の多い政権はない。「国民の幸福」「国民の大統領」「不正常を正常に」「規制緩和」「統一大当たり」「国家の大改革」など―。だが、任期中にどれか一つでも十分やり遂げられると信じる人はいない。大部分は掛け声倒れに終わるかもしれない。
自分の部下に誰を起用するかという問題だけで、多くの時間や精力を無駄にした。また、これだけ論議を呼び、不信感を与えた政権もないだろう。大統領は「時代の要求に応えられる方を起用するということは、決して容易なことではなかった」と言うが、世間の人々は「あんな候補者を一体誰が推薦するのか」という目で見ている。こうして疑念が深まり、それが累積したことで、免疫力も次第に低下していったというわけだ。
「国家の大改革」を成し遂げることを第2次内閣のテーマに掲げたものの、街頭で誰に聞いてみても、それが可能だと考えている人はいない。そんな状況を目の当たりにすると、韓国の将来に対する期待を持つのは難しい。国家の大改革を目指すのなら、大統領本人や周囲の人々の大改革を実行するのが先決だ。
大統領は依然として、前時代のシンボル同然のキム・ギチュン秘書室長を従えている。キム室長の忠誠心や、秘書室の安定を放棄したくないからだろう。だが、キム室長がその職にとどまっている限り「大改革」に向けた大統領の意志を信じる人はいないだろう。
また、人事を行うたびに「大統領府の門番」3人の名が世間に知られるが、大統領府の内部では平穏な日常が続いている。大統領が彼らを呼んで「少しでも誤解されるようなことや、職務を逸脱するようなことはあってはならない」と注意したという話も聞かない。それはたとえ該当者にとって気に障るようなことでも、国民に向けたメッセージという意味で必要なことだ。
梅雨時のカビのように増殖するうわさを聞かないためにも、大統領は自らの耳をふさいではならない。カビは太陽の光に当たれば死滅するのだから。
最終更新:8月10日(日)16時21分
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