(英エコノミスト誌 2014年8月9日号)
新疆ウイグル自治区での強権的な弾圧が反乱を煽っている。中国の指導部は戦術を切り替えなくてはならない。
ウイグル族はいまだかつて、中国において居心地が良いと感じたことがない。かつてテュルク系イスラム教徒のウイグル族が大多数を占めていた新疆は、無理やり中国の帝政に組み込まれた。
一部の地域で活動していた反体制派が共和国を設立し、独立を勝ち取ったこともある。しかし1949年にはこの共和国も中国共産党によって息の根を止められ、短命に終わった。
それ以来、1600キロ東に位置する北京の政府は新疆ウイグル自治区を抑え込もうと取り組んできた。しかし、その政策は機能していない。習近平政権は民族紛争の泥沼にはまり込む危険を冒している。このままでは中国版のチェチェンになりかねない。
噴出するウイグル族の不満
過去数十年にわたり、共産党は支配を確立するため、いくつかの戦術を実行してきた。まずは、中国全土から新疆ウイグル自治区への漢族の移住を促した。その後はインフラの整備に資金をつぎ込み、産業振興を図った。これによって創出された雇用のほとんどは、今では同自治区の総人口2200万のうち40%以上を占めるようになった漢族が享受している。
同時に共産党は、ウイグル族によるほんのささいな不満の表明に対しても、強硬姿勢を取ってきた。
それにもかかわらず、不満は表へと漏れ出している。2009年には新疆ウイグル自治区の首府ウルムチで衝突が起き、約200人が死亡したが、ここ数日はそれ以降では最大となる流血の争いが発生している。今回も100人近くが暴力によって命を落としているようだ。
ウイグル族が集中する(そして経済的に最も貧しい)南部の主要都市カシュガルでは、テロリストとされる59人が警察に射殺された。これらのウイグル族の人々は、警察署や漢族を襲撃したとされている。その2日後には、体制派のイスラム教指導者がカシュガルの大きなモスクの外で刺殺された。
このように暴力の火が燃え上がると、中国政府は決まって断固とした言葉を選び、大抵はジハード(聖戦)の危険性に焦点を当てる。