BLEACH―虚圏に舞い降りた天使―《revival》 (幽閉フリューゲル)
<< 前の話
Episode.1「勧誘される天使」
――Side…
「さて、よく来てくれたね諸君。今日集まってくれたのはもう連絡済みだと思うが、改めて僕の口から伝えることがあるんだ」
薄暗く広い室内。
高いところから部屋全体を見下ろす眼鏡の男は、多少勿体ぶりながら部屋に居る者達に話しかけた。
男が見下ろす先に居る者は、
所謂「悪霊」に分類される種族「
その下にある長い机を隔てて座っている
座っている8人は「
「ヤミー・リヤルゴに代わって、新たな
男がそう伝えた瞬間、部屋の中がざわつき始めた。
これはかなりのビッグイベントだ。
その交代なのだから、当然のように皆驚く。今までいた
空いているもう1つの席は、その交代した新しい
「諸君、静かに」
そしてそのざわめきに負けない男の言葉で、一瞬で静まり返った。
「色々詮索してもらうのは構わないが、『彼女』を待たせるわけにはいかない。さて、早速『彼女』を紹介しよう。さぁ、入ってきてくれ」
男の声と同時に巨大な扉が開き始めた。
その扉から入ってきた『彼女』に、部屋のあちこちから視線が集まる。
入ってきた『彼女』は言ってみれば、『真っ白』の一言だった。
吸い込まれるような薄く緑かかった碧眼、真っ白なウェーブのかかった長い髪、そして真っ白な肌、整ってはいるがどこか子供っぽく迫力のない柔らかい表情を浮かべた顔、かなり膨らんでいる胸、それに釣り合っていないほど細い身体に、一般女子高生の平均よりも少しだけ高い程度の身長といった、世の中の女性の大半を嫉妬させるくらいの容姿の女だった。
ただ、ロングスカートのような白い
『彼女』は、藍染様がいる席の真下に来るように移動した。
「さぁ、皆に紹介してくれ」
「はい、藍染様」
『彼女』は返事をし、「藍染様」と呼んだ眼鏡の男、そしてその左右にそれぞれ立っていた狐目の男とドレッドヘアーの男にまずお辞儀をして、
「皆さん、はじめまして。私は――」
――その1日前…
あたり一面には砂漠。
木らしい植物があっても枯れ果てており、触れると、まるで石英のようにパキパキと音を立てて崩れてしまう。
ここは『
天敵である死神すら、ここの動きを把握することはできない土地だ。
「……ふぅ、お腹減ったなぁ」
私はその砂漠の中心で寝転がっていた。
あー、もう。
弱い
「散歩でもしようかな……」
餌を探すためでもあるけど、ただここで寝るだけが暇だからだ。
折角散歩をするんだし、久しぶりに強い
別に私は戦闘狂なんかじゃない。これはただの暇つぶしの
この
だから、私たち群れを持っていない
「少し、いいかな」
「ん?」
そろそろ起きるかどうか考えていたところで、ひとりの男の声が聞こえた。
声がした方を見ると、そこには3人の人物が立っている。
1人目は、まるで狐のように細目に白い髪の男。
2人目はドレッドヘアーっていうのかな。かなり特徴的な髪形をし、目のところには理科の実験とかで使われていそうなゴーグルを付け、ピシッと立っている褐色の男。
そして……私に話しかけてきた3人目
ギンとドレッドヘアーの人の間にいる男。
顔が綺麗で眼鏡をしていて優しそうに微笑んでいる。……が。
その姿を見ただけで圧倒されてしまった。
なぜだろう。この人には、逆らうことができない。いや、正確には、
見た感じは温厚そうだ。あの優しそうな笑顔や綺麗な佇まいに品があるからだろう。
しかし……そんな彼の穏やかな表情に対し、彼のその黒い目は全然笑っていない。
なんだあの目は。私に対してなにも余計なことを考えていない目だ。私の本質を理解しようとしているような目だ。嫌ではないが、気味が悪い。
その男は、振り向いた私を見てさらにほほ笑む。三日月のように歪んだ口がまたなんとも不気味だ。
…………。
「珍しいね。
私はそう呟いたあと立ち上がり、男たちの方に向き合って笑顔で挨拶をした。
「こんにちは、私はエルシャヴァリアス・ファン・オルデンバルネフェルト。しがない悪霊風情だよ。長いから、呼ぶ時はエルって呼んでね」
そう自己紹介すると、眼鏡の男は面白そうに笑いながら話す。
「君のような
「……ふーん」
私を
女だし小さいからか、よく
このひとは違うね。ちゃんと物事を見透かすようないい目をしている。不気味だけど。隊長クラスの死神はみんなこんな目をしているのだろうか。
「僕は
男……藍染さんの声は非常に透き通っており、涼やかなものだった。しかし、そこに秘められた感情は全く見当もつかない。
顔や声だけ聞けば本当にいい人っぽく見えるのに、たったひとつ、目を見ただけで凍りついてしまいそうな男だ。普段温厚そうな人ほど、中に黒いものを溜めこんでいるという話は有名だが、彼はその象徴ともいえるほどどす黒いものを秘めていた。
でも、私にとっては好感が持てる。
単純な性格の人物よりも、こういう得体のしれない人物の方が色々想像できておもしろい。
隣に立っていた2人もそれぞれ、「市丸ギン」「東仙要」と名乗ってくれた。市丸さんに東仙さんね、覚えたよ。
「エル。早速だが、実は君にお願いというか、提案があるんだ」
有無を言わせず、やや強引に
違うでしょ。どう考えても「命令」でしょ? そんな風に心の中で藍染さんにツッコム。
でも興味あるから聞いてみよう。
「君には僕達の仲間になって欲しいんだ」
……へぇ、面白いことを言う。私に「部下になれ」と命令してくるなんてね。
藍染さんは人差し指を立てながら続けた。
「当然、タダでとは言わない。君がこれを受けてくれるというのならば、君に特別な力を与えよう」
「特別な力……ですか」
「そうだ。その名も『
アランカル……?
「説明するより実際にやってみた方が速いと思うから具体的な説明は省略させて貰うよ。しかし、簡単に言えば、
「それに」と、藍染さんが続けた。
「僕の城……
「その提案、お受けさせていただきます」
「え? 即答なん?」
私の即答に市丸さんが軽く驚く。
そんなの当たり前じゃないか。明確すぎる環境の変化に加えて、力までくれるんだよ? 乗らないでどうするって話だ。退屈だった私にとって、これほど魅力的な提案はない。
それに今、藍染さんはバラガンの城であったはずの『
しかも
この藍染って男は怪しさ満点だが、少なくともこちらが裏切らない限りはこっちに刃を向けやしないだろう。藍染に対しては絶対的な身の保証までされるんだ。あとはあくまでも自己責任。これは今までと同じ要領でやっていけばどうということはない。女だからと舐めてかかってきたら、喰らってやればいいし。
私は「敬語モード」に入る。飲み込んで部下になる以上、それなりの態度を取った方がいいと思ったからだ。
「話が早くて助かるよ。ありがとう」
「でも本当にいいのですか? こっちにいい条件ばかりのような気がしますが?」
「それくらい、君が僕達にとって貴重な存在というわけだよ。それに、君のような
「そこまで私の実力を買っていただき、恐縮です。期待に応えられるように精一杯努力します」
そう言うと藍染
よくよく見れば、東仙さんは満足気に僅かばかり微笑んでいた。なんというか、誠実で真面目そうな人っぽいもんね。私のこの対応に感心してくれたのかな。それならいいな。出来るだけ楽しむためには、仲がいい人がいっぱいいた方がいいしね。
藍染様はそして立ち上がって私に手招きした。
「ついておいで。『虚夜宮《ラス・ノーチェス》に招くとともに、君にとってとても大切なことをするからね」
「大切なこと? アランカルとやらにしてくれることですか?」
「察しがよくて助かるよ。だけどもうひとつ、別の目的があるんだ」
「それはね」と藍染は眼鏡の奥の眼光を愉しそうに輝かせながら、言った。
「君には是非とも……
――To be continued…