【コラム】大統領をめぐるうわさ

 大統領をめぐるうわさは、世間の人々は皆知っているが、当の大統領本人は知らないに違いない。

 記者がそう思ったのは、7月7日、大統領府秘書室が国会運営委員会で行った業務報告がきっかけだ。旅客船「セウォル号」沈没事故が発生した日の午前10時ごろ、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が書面で初めて報告を受けてから中央災難(災害)安全対策本部に出向くまでの7時間、対面での報告も、大統領主宰の会議もなかったということが判明した。当時、野党・新政治民主連合の朴映宣(パク・ヨンソン)院内代表と大統領府のキム・ギチュン秘書室長はこんなやりとりをした。

 「大統領は執務室にいたのか」「居場所については私は知らない」「秘書室長が知らなくて、誰が知るのか」「秘書室長がいちいち、一挙手一投足を全て知っているわけではない」

 大統領のスケジュールをリアルタイムで把握できないというわけだ。後になって知るという。しかし、問題の日は大惨事が発生した日だ。当然「大統領は今どこにいるのか」と尋ねたり、探したりしてしかるべきだ。

 キム室長が「私は知らない」と言ったのは、大統領を守ろうとしたからだろう。だがこれは、秘書室長にも隠したい大統領のスケジュールがあるという意味にもとられかねない。世間では「大統領はあの日、ある場所で誰かと密会していた」といううわさが流れた。いっそのこと「大統領の居場所について公の場で話すのは困る」と言っておけば、こんな状況にならなかったのではないだろうか。

 大統領をめぐるうわさ話はつい最近まで、証券業界の情報紙やタブロイド紙で取り上げられるようなものだった。良識のある人々は、そのようなことを口にすること自体、自らの地位を下げるものだと考えていた。誰かが話題にしようものなら『そんないいかげんな話はやめろ』と止めたものだ。

崔普植(チェ・ボシク)記者
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