被爆手帳:米調査に記録 証人いなかった75歳に交付
毎日新聞 2014年08月10日 09時14分
長崎で被爆した福岡市南区の男性(75)が、1950年代後半から被爆者を調査した米原爆傷害調査委員会(ABCC)の記録を入手して被爆者健康手帳を申請し、交付されたことが分かった。国は申請時に第三者2人以上の証明などを求めているが、男性の支援団体は「証人がおらず、これまで申請をあきらめていた人の手帳交付につなげたい」としている。
ABCCは広島、長崎で被爆した約20万人を調査し、被爆地点や被爆状況などの記録を後継の日米共同研究機関・放射線影響研究所(広島市、長崎市)が保有している。
男性は69年前、爆心地から約2.6キロの自宅で被爆したが、6年後には父の転勤で長崎を離れた。転勤族の父から「証人2人が見つからない」と聞いたことがあり、手帳取得をあきらめていたが、昨年11月、知人の勧めで福岡市原爆被害者の会に相談。以前にアンケートを送付してきた放影研に問い合わせると、58年の調査で「長崎市上西山町で被爆した」との記録があることが分かった。男性の両親が回答していたとみられる。
昨年12月、放影研が開示した記録を添えて福岡県に手帳を申請し、今年5月に交付された。同県健康増進課は「『公の機関が発行した証明書』に当たるとみなした」と話す。
放影研は、被爆者の記録やカルテを本人や家族から請求があれば開示するが、あまり知られていない。昨年8月〜今年7月に本人や家族からの請求で記録を開示したケースは44件という。
男性は「被爆の事実は消えない。あきらめずに申請して良かった」と話した。【樋口岳大】