世界最大の食品会社、ネスレ(スイス)が勢力を拡大し続けている。現地法人に大きな権限を与える連邦経営で各地になじみ、100年も前から開拓してきた新興国でも存在感を増す。工場は86カ国・地域に447カ所、商品を販売する国・地域は実に196に達する。長期的な視点での経営戦略にこだわり、ここ数年は健康関連分野への投資を拡大、高齢化社会の広がりに備えている。
■現地法人に権限、地元の嗜好に合わせる
「栄養も豊富だから重宝しているわ」。ムンバイ在住の主婦、ルチカ・グプタさんは6歳と8歳の子供向けに、ネスレのヨーグルト飲料「ネッスル・エブリデー・ダヒ」を自宅の冷蔵庫に常備する。ダヒはヒンディー語でヨーグルトの意味。乳製品を好むインドの消費者の味覚に合うよう工夫した飲料だ。インドには2012年に研究開発拠点も設け、地域のニーズにあった商品開発を進める。
ネスレがインドで営業を始めたのは1912年。チョコレートでは世界的なブランドで「キットカット」に加えて「ムンチ」などインド仕様の商品も販売する。年月をかけて販路を開拓した結果、ネスレの商品を扱う個人商店「キラナ」は300万を超える。
ネスレはインドで商品を小分けにして売っている。店先につるされているコーヒー「ネスカフェ」の1杯分パックの価格は2ルピー(約3.4円)。インド市場で7割のシェアを持つインド風味の即席めん「マギー」も1パック10ルピーで売られている。インドに根付くためには誰でも買える手ごろな値段にすることが欠かせなかった。「マギーはうちで最も売れる商品の1つだよ」。あるキラナの店主は話す。
インドのほかにも中国、ロシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンなど、ネスレが100年以上前に事業を始めた国はいくつもある。ポール・ブルケ最高経営責任者(CEO)は成長するアジア市場を攻略するうえで「我々には、とても長くやってきたという特権がある」と自信を見せる。
各地への浸透でもう1つのカギとなるのが、現地法人に大きな権限を与えることだ。商品政策では日本の「キットカット」がその一例。全国で抹茶味を販売するほか、地域限定でわさび味やほうじ茶味が登場。焼いて食べることを推奨する商品まで売り出したことは同社内でも話題になった。
オフィスでネスカフェを飲んでもらうためにコーヒーマシンを無償で貸与する「ネスカフェ アンバサダー」制度も日本で独自に考案したマーケティングだ。12万台以上を貸し出し、シェア拡大に勢いをつけている。
世界ブランドを持つ企業は商品のイメージが崩れたり散漫になったりするのを嫌い、統一性を重視するのが一般的。だが、あえて現地法人の決定を重視し、地元の嗜好やニーズを商品や販売方法、宣伝広告に取り込んでしまうのがネスレ流だ。
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