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緩やかな闇 作者:ゆいりん

ACT2

1


 さて、どうとしたものだろうねぇ。
 俺は、憮然ぶぜんとしてすわっている朔馬少年を見つめながら、かすかな溜め息をついていた。
「だから、言っただろう? そのままの姿で出歩いたら、相手側にしっかり見付けられてしまうからだって」
 なだめるように、さとすように、俺は言葉を尽くそうとするけれど、朔馬少年の表情は相変わらずだ。
「どうかな。結構、自分が女の人のカッコウをしているからって、ボクにもしてみようってぐらいじゃあない?」
 ム。可愛げのない奴だな。まぁ…その考えがなきにしもあらずかもしれない…けど、あちらさんの目をごまかすのは、一理あると思うぞ。
「そりゃあ、いきなりスカートはいてって、言っても抵抗あるのは分かるよ。だけど、この名刺の主のいる場所にいくには、電車だって乗らないといけないし、人通りの場所にもいかなきゃいけない」
 俺は、目の前に広げているワンピースとヘアカラースプレーの缶に視線を落としながら、再度言聞かせるように言葉を紡ぐ。
「昨日だって、襲われたろ。それって、この近くに相手側の目が光っているって事だよな? だったら、用心に越したことはないと思わないか?」
「だから、それはボクが結界を張れば…」
 弾くように反論してくる朔馬少年に、俺はしみじみと肩を落とした(もちろん、一つの演出としてね)。
「…それって結構、神経使うって言ってたろうが? それに、結界を張っていたから絶対襲われないって事もなかったんだろう?」 でなければ、昨日だって…今までだって逃げおおせていたはずである。それぐらいは、俺だって疑問に思うぞ。
 案の定朔馬少年は、ぎゆっとその唇を噛み締めた顔を俺に向けてくる。
「だから、見た目でも変えてみると、案外簡単に誤魔化されるもんなんだって。店の客でも、俺の事今だに女だって信じてる奴がいるもんな」
 そう、オカマバーと分かっているのにもかかわらずだ。声だって、低いっつーに。実際、確かめるとほざいて触ってきた奴だっているんだぞ。もちろん、その直後に殴り飛ばしたけど。
「根本的に、朔馬くんは目立つよ。その髪の色といい、キレイな顔といいね」
「顔は、関係ないだろう。髪だって、生れ付きだ」
 だから、目立つんだろーが。クォーターって、言ってたっけ?
「な。髪の色だって変えてみるだけでも、随分変わるんだか。別に、本格的に染める訳でもないし、ほんの少し色を乗せる程度だよ。だから、ごねないでくれよ」
「だったら、髪だけでいいじゃあないか。なんで、そんな服まで着るんだよ」
 明らかに承服出来ないと、広げられているワンピースからわざと視線を外して言葉を吐く。その手は、落ち着かなくナキの頭を撫で付けている。
 まったく、頑固だねぇ。まあ、いきなりスカートをはけと言い出した俺も俺だけど。だけどなぁ。先にも言ったとおり、朔馬少年は目立つんだよ。その美貌も、その姿も。白く輝く髪だなんて、普通の日本人にはない色だ。おまけに、性別すらも凌駕りょうがしてくれるその顔。まあ、大人になりきっていないから、よけいにそう見えるのかもしれないけど。とにかく、ふらふらと歩いていても、人目を十分に引いてくれる存在なのである。
 これから、例の占い師のお兄さんの所に行くっていうのに、そのまんまの姿では見てくれと言わんばかりだろう。それじゃあ、すぐにあいてさんに見つかってしまう。…って、俺は思うんだけどねぇ。
 そんなこんなで、色々考えてこのワンピースを引っ張り出して来たって言うのに…
 いやね。いたって単純に考えたんだけど。少年に見えなきゃあいいんだろうってね。もともとの素材がいいから、違和感なく仕上がると思うんだよね。それに、別に化粧までしようとも思ってもいないしぃ。
 俺は、広げていたワンピースをおもむろに手元に引き寄せた。本来のそれは、超ミニのフレア。どっかの客が着てくれって、強引にプレゼントされたモンだったりする。しかし、見事にサイズを間違えくれている。
 俺って、結構着痩せするタイプみたいだったりするんだよねぇ。本当は、その日のうちに捨ててやろうかと思ったんだけど、なんだかタイミングを外してしまって、タンスの肥やしになってしまっていたのである。
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