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いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。(上) 作者:神部大

第三章 強さとは…

出会い


 髪は輝く栗色、学ランボタンは勿論二個開け、ズボンはあくまでスタイリッシュに太すぎず。



 成績そこそこ、運動バッチリ、男女共に知名度抜群。



 中2になった俺は不良としてなかなかの好成績を修めたと思われた…






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 学年の上昇と共に行われるのは、先輩達の卒業と部活のレギュラー争い。


 そして、クラス替えだ。


 といっても、俺の知名度ではクラスが変わった所で何も変わらないがね。





 ただ、1つ気になるのは…

 今のクラスでいじめが蔓延っている事だ。



 どうやらそいつは1年の頃からいじめを受けていたようで、いじめのリーダー格とその仲間数人が共にクラス変更なし的な事態になったのだろう。


 可哀想に…新たなクラスメイトも混じり、いじめ集団は最早クラス全土に広がっている。


 ここまで来ると、俺の権力を持ってしても

 どうすることも出来ぬな……


 許せ、地味少年よ。

 (しかし、良い根性してんな… 俺だったら登校拒否だ。)


 そんな事を考えながら、自販でコーヒーを買う。

 (不良はブラック!! 男はブラックだぜ!!)


 なんてカッコつけていたら、後ろから何人かの耳障りな声が聞こえてきた。



 振り向いてみるとその集団は3年の不良集団だ。



 野谷先輩がいなくなってからと言うもの、今まで大人しかった先輩が幅を利かせている。

 (1人じゃ何も出来ないバカ共が…っ)



 とりあえず回れ右をして通りすぎようと心みる。

 一応面識はあるから、会釈程度に頭を下げておいた。


 「おっ、篠崎チャンじゃないか~」

 「おぉ~有名人っ!!」



 おいおいなどと皮肉を言いながら肩を捕まれ、慣れ慣れしく絡んでくる先輩。

 肩を掴む力からするにやはり… 嫌がらせで
間違いない。


 「人気者なんだよなぁ… 。惨めな先輩にドリンク恵んでくれよー!? 」


 「おぉ、いいねぇ。 俺も俺もー!」



 クソ先輩方はどうやら俺を囲んで威嚇しているようだ。

 (ふざけやがって、弱ぇーくせに身長だけは無駄にでけーな。 なに食ってんだょ。)


 「あ、はは。 いや…そんな持ってないっすよ。 300円しか…」


 「あぁ~、たんねーょ。 俺には出せねぇーっての? 」


 (クソっ!! どうせ、出したら出したでバカにしてんのかとか言うんだろーが…)




 「ほんっと、すいません!! 次回は400円用意しときますんで、今回ばかりはご勘弁をー!」



 「…ったく、しょーがねーな。 次は用意しとけー。  人数増やしとくからな。」



 はははと笑いながら、クソ先輩方は何やらジュースを誰が奢るだのやっている。




 俺は隙を見て、その場を去った。






----



 全く、最悪に気分が悪い日だった。

 しかも情けないことに足も震えて力が入らない。

 (何のために辛い日々の中ボクシングをやってきたんだか…)

 俺はそんな事を考え、落ち込みながら、家に向かって歩いているところだった。



 (あれは……白戸高校!! …クソっ ……なんて日だっ!! ……いや、ギャグではなく。)


 どうやら、うちの生徒に絡んでいるようだ。

 高校生が中学生に絡むというのはほんとどうなんだろうか。


 しかも、あんな地味な…
 (…って、あいつは…)



 高校生2人組に絡まれているのは、クラスのいじめられっ子、地味少年君であった。

 (解: 彼にもきちんと名前はある)


 可哀想に… 校外でも絡まれて、正に人生乙って感じか。

 と思いきや俺は恒例の木陰野次馬見物を開始した。



 …正直、自分のビビりっぷりには腹が立つが気になるものは仕方ない。

 他人の不幸は蜜の味…だ。

  (解: 拓也のクズっぷりを代わりに謝ります。すみません。)




 「…ちょっと、金貸してくれって言ってるだけだろー」


 「僕は持ってませんし、知らない人には貸せません。」


 「んだよ、このクソチビっ!! オタクのクセに生意気だな。」



 どうやら、金をせびられているらしい。


 どいつもこいつも金、金と… これも不景気の煽りかね。


 ってあの地味っ子、高校生相手になんて事を言ってんだょ…)


 「僕はオタクじゃありませんっ」


 「あー!? うっせーよっ!! 見た目がオタクだ
ろーがっ!!」


 「見た目で判断しないでくださいっ」



 あぁ…やめろ、やめろ。

 お前はオタクだょ。

 誰が見てもオタクなんだょー。


 世の中見た目が全てだ。

 マジでぶっ飛ばされるぞ、おぃっ。





 「うっぜーな、コイツ。 ちっとこっちこいょ…」




 終わった…。
 あぁ、見たくない。




 しかしっ!! どうなる…


 (行くべきか… その為に強くなったんじゃ… ぃや、でも高校生はまずい。 中学生ならまだしも… でも、カッコイイ不良は…野谷先輩ならっ…!! )





 …くそ、だめだ。

 ここにいるだけで心臓が潰れそうだ。

 ドキドキして、吐きそうなぐらいなのだ。




 その間も地味少年は胸ぐらを掴まれたり、突き飛ばされたりしていた。

 一向に謝る気配のない少年に

 (解: 謝る必要はない)


 高校生共は苛立っている様子だったが、何かを見つけたようだ。


 「おいっ!!  見てみろよ、こいつの時計。」

「おぉっ!! A-shockじゃんっ、生意気ー!! 金ないなら、これでいいわ。」


 「担保、担保ー」


 …コイツら… マジでゴミだ。

 (解: お前もなかなかだ。)




 「そ、それはっ!! だめだ!」

 地味少年は時計を捕った高校生の足に必死ですがり付いたが、ひたすら殴る、蹴るの暴行を受けるとその内ぐったりした。



 「おぃ、いこーぜ。」

 「おう、いいもんもーらいっ!!」


 そういうと高校生共はその場から去っていった。



 見たくないものを見てしまった。

 (だから、大人しくすればいいのに… いじめられっ子の分際で…)




 とりあえず地味少年に駆け寄る。


 「お、おい…大丈夫か…よ。」

 「ぇ…? あ…ぅん。……大丈夫。」


 「…お前、無理すんなよ。 いつもいじめられてんだろ? 」




 「はは…… そのおかげで慣れてるから… これぐらい。」




 でも… とそいつは涙を堪えるようにして時計を盗られた事を本気で悔しがっていた。
 なんでも母親から貰った誕生日プレゼントなんだそうだ。



 「…僕が……弱いから…こんな…」




 唇を噛んではいるが、今にも泣きそうだ。


 「…なら、強くなりゃいーだろっ。」

 (クソっ…!!  俺が…もっと強けりゃ…)



 「…篠崎君みたいに強くなんて、僕には無理だよ…」



 「…なんで俺の名前…。」


 へへ、とそいつは遂に涙を抑えきれず泣きながら笑った。


 「篠崎君は有名だからね。  運動も出来て、友達も多くて、格闘技をやってて、先輩数人を1人で倒したとかさっ。 さっきの高校生だって、篠崎君なら一瞬だったねっ!!」



 「ん…まぁ、な。 もっと早くくればよかったな、悪い。」

  (…ふざけんな、どんな噂だそれは。 しかも…俺が強いだと?  木陰で見物してる俺が? 先輩にヘコヘコしてる俺が? ケンカもロクにしたことないのに……)








 こいつの方が…

 よっぽど…カッコイイじゃねぇか……





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