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いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。(上) 作者:神部大

第一章 かっこいい不良とは

憧れ



 「あー涼しいなぁっ!! くそ、いい思いしやがってぇ。」


 「篠崎くん、今日も練しゅ… 修行だったんだね。 昨日より覇気を感じるよっ。」


 「ふん、まぁ、な。 不良たるもの強さが全てだからな… お前もちったぁー鍛えろょ。」



 「いや、僕は…無理だよ。 絡まれたら怖いし…」


 「全く、情けない奴だ。」



 と、そんなこんなで、俺はこいつとゲームの続きを楽しんでいた。



 室内でゲームをするなど、不良である俺にはあるまじき行為だがまぁ友達なのだ。
 一緒にいるのもなかなか楽しいからな。


 ん、なぜこんなやつと友達か…だって?




 それを話せば相当長くなる。

 (解: じゃあ、いいです。 ……あ、ちなみに私は解説としてこれからもちょくちょく出ますのでよしなに。)



 うん、じゃぁ聞け。
 これは入学当時にまで遡る……




----


 俺は中学1年の頃まで普通の奴だった。


 まぁ、だが中学に入学したことによって今まで違う小学校だった奴らが一気に集結する。
 もちろん… 女子もだ。


 そこで、俺は最初の部活選びの際なぜかテニス部がモテると思い入部を果たした。


 実際、テニス部には可愛い女子がたくさんいてそこそこな外見の俺は声をかけてもらうこともあり、満足だった。


 問題は… 男子がひょろいという事だ。


 俺は小学校の時から筋トレに、山登り、暇さえあれば体を酷使してきた。


 これから、色んな学校の不良ドモが集まると言うのになんと危機感の足りない事。


 そう、正直なめていた。
 テニス部を、テニス部員を… この時までは。



 その後、何度か練習に参加したがまあ俺の体力に及ぶ程のものではなかった。
 まぁ、同じ1年の中にはダウンする者も多かったが。


 そんなテニス部の中に一際目立つ人がいた。


 部長だ。

 二年の時から全国大会に出場する北中こと
、北見中学テニス部のエース。
 東雲(しののめ) 結城(ゆうき)


 高身長にシュッとした顔つき、黒髪をサラサラとなびかせた姿に女子部員は釘付けだ。


 まぁだが、俺からすればモテてもひょろい
男ではなと、内心バカにしていた。


 …そんなある日の事だ。


 俺が校門に向かって歩いていると、女子に囲まれながら帰る1人の男… 部長だっ。


 付きまとっている女子達はキャピキャピといった様子でなにやら話しかけているが、部長は涼しげな顔で微笑むばかりだ。




 全く、うらやましい限りだ。
などと思っていると、校門の外に見慣れない制服を来た男子が二人。

 (あれは…、白戸(しらと)高校の制服だ。)



 白戸高校はあまりいい噂を聞かない高校だが、うちの中学から近い所にあるためよく見かけるのだ。




 白戸高校の生徒は女子に囲まれた部長に絡んでいる様子だった。
 (ぅわぁ…モテるのも、大変だなぁ。 どうするんだろ、女子の前でカッコ悪い事になって…)



 剣呑な雰囲気で高校生は部長の胸ぐらを掴み、怒鳴っている。
 女子も怖がってしまい、部長の後ろで固まっている。



 あわよくば「やられちゃえー、部長ー」とか思っていた俺を責めないで欲しい。



 …ところが、だ。
 部長はその高校生の腕を掴み捻りあげたのだ。
 (なにぃ!! 怖くないのか!? もう少し近づこう)


 声がかろうじて聞こえる木陰に身を潜めた俺はその様子を見ていた。




 「なめてなんかいません。 ただ、暴力は止めてください。」


 「てめぇっ!! ざけんなぁっ中坊が!! 」


高校生の1人…ここでは高校生Bとしよう、が部長に殴りかかろうとした。
 (…ケンカだ…!)

 と、そこで高校生Bは前のめりにずっ転んだ。


 胸ぐらを掴んでいた高校生Aはビックリして後ろを振り返ったが、そこで高校生Bと同様の運命を辿った。

 (なっ、マジかよ…、あの人は確か…)




 高校生A,Bを一瞬でのした男は栗色の髪の毛を夕陽に輝かせ、笑っていた。

 部長と同じくらいの身長の後ろに隠れて見える二人の女子…
 (あ、あれは青南女子(せいなんじょし)高校…)



 (あの人は確か… 北中でケンカが一番強いって言う超不良……… 野谷(のや)先輩…!? 女子高生まで連れて歩けるとはっ!)




 部長は驚いた様子だったが、女子達に謝りながら先に帰らせたようだ。



 「野谷…なにしてんだ、こんなとこで。」



 「おぃおぃ、俺より女の数多いな~ 全く隅に置けない奴だ。」



 はははと笑いながら、野谷先輩は自分の後ろにいる女子高生のお尻をナデナデ…

 「ちょっと野谷く~ん」などと楽しそうにしている。



 「おぃ、東雲、まだテニスやってんのか… また、二人でつるもーぜ。 なっ。」



 「今年は最後の夏大だ、 今年も全国へ行くつもりだ。」


 「~っはぁ… 全く… まっ、んならここにいたら、ヤベーだろ。  早く帰れよっ。」




 「…あ、…あぁ。」

 「じゃぁな。」


 そう言うと、部長はその場を去ろうと歩き出した。



 「野谷くんー、男らしーっ」

 「さっすがっ!! 強いし、かっこいい!! 白戸高って、(わる)で有名なんだょー」


 「俺にかかればよゆー、よゆーってかっ!! 」


 と、その時部長が突然振り返った。




 「…野谷、あんまカッコつけんなよ。 ……サンキューな。」


 じゃ、と言って部長はまた歩き出した。



 「ふん…。 うっせーよ、バーカ…」

 野谷先輩もとっとと女子達を連れどこかへ行ってしまった。




 (……かっ、かっこいーーーー!! かっこよすぎるって!! てか、なんでうちのひょろひょろ部長と学校一の不良の野谷先輩が… えっ!! まさか、部長…強いの!? 不良だったの!? ぇーっ!!)



 「か、かっこいぃ……」



 まぁそれから俺が部長を見直すことになったのは言うまでもない。
 我ながら単純脳だと思う。




 その時決めたんだ。
 俺はカッコイイ不良になるって!


 そう…野谷先輩のような。
 カッコイイ不良に!!




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