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R18清楚な美少女の優等生だって、簡単にAV女優になっちゃうんだよ♡ 作者:Summer Fruits

第一篇 夏菜子のなつ――はじまりのなつ――

006  初めてのギャルメイク (3)

まだ少しドキドキしながら友梨の美容室に向かう夏菜子の背中を押したのは、親友の真希だった。

「なに、そんなに心配してるの?大丈夫だよー。去年もお祭りが終わったらソッコー戻してくれたから。友梨さんに任せてれば」
「う、うん……」
ときめきと不安が入り混じった宙を歩くような感覚で、友梨の美容室についたのは12時56分のことだった。

「いらっしゃい、夏菜ちゃん。さあ、どうぞ」
夏菜子と真希に気づくと、友梨が自分から戸を開けて2人を迎え入れた。カララン、と鈴の音が涼しげに響いて、手動のドアがしまった。

「あ、はい……あ、あのー……ほんとに大丈夫ですよね」
「うん?すぐに戻せるってこと?心配なら髪はやっぱりメッシュにしとく?」
4日前、「祭りモード」の髪型とメイクの為にここを訪れた時、夏菜子が髪を染めることをためらった理由は、夏休みが終わった後のことを考えてのことだった。友梨は代案として、表面の髪だけ金髪にして、最悪夏祭りが終わったら色の変わった髪は切る、とかエクステですませるというようなことも言ってくれたのだが、結局夏菜子は踏み切れなかった。

だが、親友の真希を始めとして、高校生以上の女の子はみな、「祭りモード」と友梨が呼ぶような、ギャルメイクに色を抜いた髪を飾って参加していたので、夏菜子は自分だけがひどく子どもであるような気がした。そして、同級生や歳の近い男の子たちからもそういうふうに思われるのが、小学生の頃の優等生の自分がおとなになれずにいることを晒すようでとても嫌だった。

髪を染めて、パーマをかけて、大きなピンクのリボンで髪を飾り立てて、派手なメイクで綺麗になってみたい……「祭りモード」をもっともっと楽しみたい。そんな衝動を抑えられなかった。
「どうせなら、まっキンキンの金髪にしてみる?夏菜ちゃん、顔立ちが結構はっきりしてるし、素材が天下一品だから、似合うよ」
「金髪……?え?」

すこし茶色に染めるだけだと思っていた夏菜子は、友梨の思いつきのような一言に、動揺していることが友梨にも、真希にも丸わかりだった。

「い、いや、まぁ、まさかそこまでしないとは思うけど」
「戻せるんですか?」
間髪入れずに夏菜子が話に乗ってきたことは友梨にとっても予想外だった。
そして、このお嬢様然とした美少女が心に秘めた、「はじけたい」という曖昧な願望の深さを思い知らされるようだった。

「戻せる、けど、いきなりそこまでする?」
「でも、似合うん、ですよね」
「うん、それは保証するわ。あとはちょっとメイクも教えてあげる。
夏菜ちゃんなら、ハリウッドの女優さんみたいに、美人になるわよ」
ハリウッドの女優さん……その言葉が夏菜子の決心を固めた。

「じゃ、まっきんきんでお願いします。まっきんきんで」
鏡のなかの黒髪の少女をじいっと見つめたまま、夏菜子がそう答えた。
「金髪にするの?夏菜子、マジで?うわー、大冒険だね」

真希はまるで自分のことのようにはしゃいだ。
「だ、大丈夫?夏菜ちゃん、なんか目がまんまるだけど」
「いえ、だ、大丈夫です。友梨さんにお任せします」
「わかったわ。大丈夫よ。どうしようもないときはショートにして何とかごまかせるようにするからね」
「あ、ありがとうございます」

東京で修行してきた友梨には、ギャルは一日にしてならないということがよくわかっている。お嬢様そのものの夏菜子がいきなりギャルになりきるのはどだい無理な話なのだ。

女の子がギャルになるには、服も揃えないといけないし、アクセサリーも必要である。それは何も夏菜子だけではなく純朴な田舎の女の子たちも同じだった。

その点、「祭りモード」と友梨が呼ぶようなやり方なら、服は浴衣やサラシに半纏と決まっているので、髪とメイクと簡単なアクセサリーだけで十分ギャルになりきることができて、まだ校則にうるさい学校に通う田舎の女の子たちには魅力的だった。

浴衣でも、サラシでも、すこし目をパッチリにして、大げさにチークを盛って……とちょっとした工夫で新しい自分を発見してしまう女の子が年に10人以上は現れ、その子たちは友梨のリピーターになっていた。

去年、初めて友梨に「祭りモード」を施してもらった真希は、2学期が始まる時には綺麗に抜けた茶髪を黒く戻して、健康的な優等生に戻ったのだった。その信頼感が、友人を連れてくるきっかけにもなった。

「そうそう、うまいじゃない。」
「エェ?そうですか?」
髪の色が変わる間、友梨は夏菜子にメイクの方法を教えていた。アイラインとマスカラで目を大きく、まつげをカールさせて、瞳を切れ長に見せる。

少女漫画の主人公のように映える自分の顔に、驚かずにはおれない夏菜子であった。

「夏菜ちゃんはやっぱり可愛いわね。どんなメイクでも映えるもの」
「そ、そんなことないですよー」

普段、清楚で落ち着いた雰囲気を醸し出す美少女でも、女子高に通う女の子である、こうやってあらためて可愛いというふうにほめられることはあまりない。夏菜子は、すっかり舞い上がっていくようだった。

「本当にいいの?根本まで金髪にするなんて」
友梨がそんな夏菜子にあらためて確認する。
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