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街に出ると、見た事のない建物や人々が目に入った。
「ここは童話の森。夢国は大きくわけて4つのエリアがある。童話の森は一言で言うとメルヘンの世界。子供の頃に思い描いていたようなところだ。お菓子の家や妖精など、人気の観光地だ」
「…すごい。遊園地もある」
歩の目に飛び込んできたのは、大きな観覧車、そしてジェットコースターや白亜の城。ここからでも人々の楽しそうな声がよく聞こえる。
「夢国で唯一ある遊園地。ドリームランド」
「そのままの名前なのね…。遊園地か…何十年も行ってないなぁ…」
歩は小声で呟く。遊園地の横を通り抜け、もう少し歩くと、大きなショッピングモールが見えた。
すれ違う人みんなが楽しそうな笑顔で溢れている。
「ドリームモール。ここなら欲しいものなんでも手に入る。………よし、髪切るぞ」
「えっ…!?」
マイセンに連れてこられたのは、少し寂れた美容院だった。お客さんはいない。扉を明けると人間の身体なのに顔が犬の大男がタバコをふかして椅子に座っていた。犬の顔を見る限り…ブルドックだ。
「バコ。相変わらず不景気かい?」
バコと呼ばれた人面犬は、タバコの火を消すと立ち上がり、近寄ってきた。
そして、マイセンに抱きついて尻尾をふる。
「マイセンじゃないのー!!最近来てくれないから寂しかったわー」
ガクッと拍子抜けする。外見はがたいがよくて、強面なのに、行動が…声が…
もしかしてアッチの世界の人かしら…
するとバコは歩に気づき、歩の視線まで腰を落とした。
「可愛い坊ちゃんじゃないの。この子は誰?マイセン」
「坊ちゃんじゃねぇよ」
マイセンは歩の帽子を取ると、歩の金色の長い髪が露になった。
それを見た途端にバコは開いた口が塞がらなくなった。
「ももも…もしやこのお穣ちゃん…」
「そっ。現在この夢国の全総力をあげて探し出している、お尋ね人」
「あっ…えっと…初めまして…歩と申します…」
その後、バコはマイセンにあれこれ言っていたが、マイセンはまぁ、なんとかなるの一点張りだった。
そして歩は台に座り、バコに髪を切ってもらう。
「さて、マイセンの希望だと、別人に変えてくれとの事だけど、どんな髪型がいいかしら?」
「そうですね…」
バコは犬の手なのに、鋏を器用にもち、歩の髪を手際よく切っていく。
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