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「おまたせ~マイセン。あたしの最高傑作よ!」
椅子に座ってコーヒー飲みながら、雑誌を読んでいたマイセンはそれを閉じて本棚に戻す。
バコの大きな身体の後ろから、恥ずかしそうな顔をしてゆっくりと歩が姿を現した。
「首が…スースーする…」
胸より長かった髪は顎辺りになり、金髪が黒髪へと変わった。
ショートボブ。キツそうなイメージから可愛らしい少女へと変身した歩。
まだ違和感があるのか、両手で首辺りを撫でていた。
マイセンが歩の前まで行き、その両手を掴んで、腰をかがめ目線を合わせる。
「…ん。いいじゃん。可愛い」
その言葉を聞いた途端、歩は自分の頬や耳が熱を帯びたのを感じた。
バコはその出来とマイセンの言葉に満足げな表情をしている。
「これ、お代。これならバレないだろう。後は服を買いに行くぞ」
「毎度あり。歩ちゃん、無事に帰れるといいね」
「ありがとう。バコさん」
マイセンの後をつけて歩も美容院を出た。
「あんなに腕がいいのに、どうしてお客さん来ないの?」
「このドリームモールには美容院が集結している所がある。だいたい皆そっちにいく。バコの店はこのモールの端っこだから、あんまり知られていないんだ。それにあのキャラだろ。子供はおびえて、男は逃げ出す」
想像するとなんとなく分かる気がした。
「でも、あたしはバコさん好きよ。カット中に恋話で盛り上がっちゃった」
「あいつ、意中の男でもいんのか」
「ふふ…内緒。マイセンの話もしたよ」
「どうせ、ろくでもない事だろう」
「マイセンは女泣かしだって」
「ろくでもない話だ」
「性格は気難しいけど、仕事に関しては冷徹で頼りがいがあるって」
「俺の仕事してる所、見た事ないだろう」
「チェスがバコさんに言ってるみたいよ」
「ったく…」
そんなたわいもない話をしながら、二人は服を選んでいく。
歩が黒色のワンピースを鏡で合わせていたら、マイセンに取り上げられて、淡いピンクのワンピースを渡された。
「「こんなの似合わない」」
二人が同時に言葉を発した。
「…お前は肌白いし、髪も黒くした。それに背もまぁ高いし、黒色なんてきた全体的に暗いし、威圧感を与える。だから優しい色使いの服を選べ」
「マイセン…スタイリストみたい」
「そうか?お前に似合う色を選んでいるだけだけど…」
上下合わせて10着購入した。靴やアクセサリーも。
全部マイセンがチョイスしてくれた服達。
自分では絶対選ばないような可愛らしい服ばかりだ。
「マイセン…ごめんなさい。全部買ってもらって…」
「そんな言葉、いらねぇよ」
「えっ…?」
「嬉しい時は?」
「……ふふ。ありがとう」
微笑みながら、そういうとマイセンは納得したようにうなづいた。
そして昼過ぎには家へと戻ってきた。
チェスはまだ眠っているようだ。
マイセンがテレビをつけると、またニュースが流れていた。
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