だだッ広く、行き止まりが見えない長い長い廊下をシディアはウサヒコの手を引いて走る。迷宮のような廊下。規則的に壁に飾っている高そうな絵画に壺、甲冑。行き止まりが見えたと思えば、それは曲がり角。ふたりは何度も何度も角を曲がり、ウサヒコは玄関までの道のりを忘れてしまった。駆けてすれ違った部屋扉は30を超えたところで。
「ウサピィさん! もうすぐです!」
シディアとウサヒコはT字路を左に曲がる。ウサヒコは思った。
「ここ、さっきも通らなかったか?」
「――はいっ! 実は迷っていました!」
「…………」
「小さい頃から遊びに来てたんですけど、やっぱりルチルちゃんのおうちは広いですね! ルチルちゃんの部屋までの道のりは覚えられないです!」
ウサヒコは呆れ顔で。
「どうするんだよ」
「大丈夫です! こういうときは……」
シディアは大きく息を吸い込み……。
「――ルチルちゃ~~ん! 迷っちゃったぁ~~~!」
シディアの大きな声が廊下にこだまする。
「いや、こんなに広いのに俺たちの位置がわかるわけないだろう。絶対にこない……」
――瞬間。ウサヒコの背後から光、稲妻。
稲妻のオーラを纏ったルチルが光の速さでシディアに抱きついた。
「――シディアさん、いらっしゃい!」
「ルチルちゃん、苦しいよぉ」
「俺は理解をするのに苦しい」
ウサヒコは頭を抱えた。なぜ彼女は光の速さで移動できるのだ。なぜこの場所がわかったのだと。ペールイエローのオーラを纏うルチルは
属性魂解除し、オーラを解いた。毛先は整えているが、毛量を整えていないストレートの金髪。
燈火が、風で消えたようなオーラが髪を優しくなびかせた。
「――? どうしたんです? えっと、ピィピィさん」
「違うっ! ウサピィだ!」
「ああっ! すみません! ウサピィさん」
「いや、違う……ウサヒコだ、ウサヒコ。俺の名前はウサヒコだ」
「――なるほど。ウサヒコ・ウサピィさんですね。先日はお世話になりました」
「いや、俺の名前は……」「ルチルちゃん!」
「はい?」
ルチルはシディアの方へ振り向いた。
「俺の名前は
佐宗……」「一緒にカナブンを絶滅させようっ!」
ウサヒコの声はシディアの大声でかき消された。
「えっ? カナブン?」
「いや。ルチル、さん。俺の話を聞いてくれ」
「はい?」
ルチルはウサヒコの方へ振り向いた。
「俺は美容師、
佐宗……」「家がカナブンのせいで燃えたの!」
ウサヒコの声はシディアの大声で消え、ルチルはシディアの方へ振り向いた。
「……え。 燃えたって、どういうことですか?」
「あの、名前……」
「カナブンがね、ルビィちゃんの鼻にくっついてくしゃみして、ぼかーんって! だからカナブンを絶滅させよう!」
「……ええーと」
ルチルは訳が分からなくて困っている。ウサヒコは自分の声をシディアにかき消されて思い出した。名前を覚えてもらえなくて悔しい思い出。それはアシスタント時代、お客さんになかなか名前を覚えてもらえなかったことと重なる。
「……その、家が燃えてしまったのはカナブンのせいなのですか?」
ウサヒコは
葛藤した。もう俺は『ウサピィ』という名前でもいいのではないのか? とても親しみやすくて覚えやすい。異世界に来てしまったのだ。思い切って名前を変えて新しい人生を歩むのも、ひとつの手ではないのかと……。
「うん、カナブンのせい。もう家の事はいいの。今はカナブン。このままだと世界が危ないの。だから絶滅させないと……」
「い、いや……カナブンは世界にとって危なくないと思いますけど……。そっとしておきましょう?」
「ダメなのっ!」「ダメだっ!」
シディアはカナブンを絶滅させるために。ウサヒコは両親に愛をもってつけてくれた名前を大事にするために叫んだ。
「ふぇ!?」
ルチルはシディアとウサヒコの熱意に面食らった。そんなにカナブンが憎いのか、なぜ? 私にはわからない。だが、家が燃えたとシディアは言った。あの家はシディアとルビィの秘密基地。私は何度も遊びに行った。そして何度も何度もふたりの夢を聞いた。あの家にはふたりの夢と希望が詰まった宝箱のようなものだ。それが燃えてなくなった。――カナブンのせいで。
たしかにふたりが復讐に燃えるのは無理もない。親友として、ふたりの復讐は止めなければならない。だが、まあいいか……と、夕飯のおかずを適当に決めるようにルチルは協力することを決めた。それは復讐相手が人ではなく、カナブンだからだ。
カナブンの生態は良くわからないが、絶滅しても特に問題はなさそうだ。カナブンは子供たちに不人気だし、大人は道端でじっとしているカナブンを見かけても特に驚かない。それは路に転がる小石のような存在。むしろ急に飛んできて、体当たりとかされると
無性に腹が立つ。
だから、いなくなっても残念がる人はきっとカナブンマニアだけだろう。下手したら絶滅しても誰も気がつかない可能性もあるし、ひょっとすると喜ぶ人がいるのでは? 子供たちに大人気の
圧倒的超魔力甲虫クラスになると消し去るのは
躊躇はするが、カナブンは消し去ってもいいと彼女は思った。
「――わかりました。わたくしの雷光魔法で、世界中のカナブンを消滅させてやります」
「やったあ!」「えっ」
シディアは満点の笑顔で喜んだ。ウサヒコはただの驚き。
* * * * * *
――535匹目。それは2日前から数えている、この世からカナブンを消し去った数。
ウサヒコはカナブン撲滅商社の平社員なので、副社長であるシディアと、特別
駆逐講師であるルチルにこき使われ、カナブンを消し去った数をメモ帳に正の字で
記している。
ルチルの家の広い庭でシディアとルチルはカナブンを探し出している。
アイアンロッドを草むらに向けて振るシディア。
「見つけたっ! えーい!」
カナブンは空を飛び、シディアの攻撃を避けた。
「ルチルちゃん! そっちに逃げたよっ!」
「逃がさないっ!
永劫の聖剣ッ!」
ルチルの手から、閃光と共に現れた光の剣。ルチルは空高く飛び上がり、天から地にかけてカナブンを一刀両断した。半分になったカナブンは稲妻の
餌食になり、更にバラバラになる。緑色に光り輝く羽根は空を舞い、風に飛ばされた。
ルチルは剣をしまい、長い金髪を片手で耳にかけて一息。視の線は豊かな庭の緑に少し混じった、小さく赤い可憐な花々。線の薄い身体は、横から見ると更に薄く見えるが、むっちりとした曲線のけわしい胸を目立たせる。庭の緑と同化したカナブンの羽根はどこに飛ばされたか見えなくなった。シディアはウサヒコに一匹倒したよと、きちんとメモ帳に一本線を入れるように
促す。ルチルが葬ったカナブンの数は全部で536匹。すばらしい数字だ。ルチルはえくぼを作って。
「――お昼にしましょうか」
シディアは思い出したように、食べられそうな雑草を見つけてむしろうとする。ウサヒコは急いでその手を掴み、一言。
「やめろ」
今日は
曇天。だが、三人の元気の良い声がどんよりとした厚い雲をはらうかのように庭に響き渡る。
「ウサピィさん。今日はどちらへ食べに行かれますか?」
「いや、俺の名前は……」「スパゲティ!」
シディアの元気な声は当たり前のようにウサヒコの声を消す。
ウサヒコは青筋を立てて、シディアの頬をつねった。
「……シディア。ルチルは友達かもしれんが、頼ってばっかりだろう。少しは遠慮しろ。あと、俺の言葉にわざと大声をかぶせているんじゃないか? んん?」
「ふぁふぁん、ふぁふぁん……」
「ウサピィさん。お代はきっちりルビィさんから、後で徴収いたしますので……」
「――ぷぁっ! ルチルちゃんはそういうところはきっちりしてるから大丈夫ですよ!」
「そ、そうか。それならいいが……。すまないな。本当に」
ウサヒコは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今の自分は無一文。お金はルビィに払ってもらう予定。そして、申し訳ない気持ちが邪魔をして『俺はウサヒコだッ!』と何か言いづらい。
「――本当にシディア。お前は少し自重しろ」
ウサヒコの真剣にシディアを
叱る。
「は、はい……すみません」
「分かればいい。今のこの状況、俺が絶対になんとかするからな。お前とルビィは自分のことに集中すればいいから」
「はいっ! がんばります!」
ルチルはウサヒコとシディアのやりとりを見て微笑んだ。そして間にはいり、ふたりの腕に抱きつく。それは自分も仲間に入れて欲しいように。
「――ウサピィさん、スパゲティを食べに行きましょう?」
甘えるように。
*
ルベール街のメインストリート。シディアの大好きなスパゲティ屋さん。2日連続この店だ。
長方形のテーブルにかかる真っ白のテーブルクロス。丁寧にセッティングされたフォークとナイフ群。昨日、シディアがミートソースを散らして、ウサヒコがテーブルマナーを叩きこんでいた。その姿をみてルチルは
終始微笑んでいた。
ウサヒコはシーフードスパゲティ、シディアは昨日と同じミートソースに決めた。
「んー……迷いますね……」
無理もなかった。2日連続、3回連続スパゲティ。ルチルは何を頼むか迷っていた。
ウサヒコはふと、窓ガラスから『空き家』と書かれた建物に目がいく。女性の多い商店街、人の通りも多く立地条件は申し分ない。……だがこの世界では美容室はおろか、美容師は存在しない。どうにかしてふたりを養いたいと思った。深く思えば思うほど、心から重いため息が出そうになる。
「ウサピィさん、どうしたんですか?」
ついにため息を出してしまったウサヒコ。シディアは心配した。
「なんでもない。それよりシディア。今日は綺麗に食べろよ」
「はいっ! がんばります!」
ルチルはようやく頼むものを決めたようだ。手を上げ、店員を呼び3人のメニューを頼んだ。
ウサヒコは店員が来てからずっと『空き家』を見ていた。
「あの、先ほどから空き家が気になっておられるようですが……」
「え、ああ……」
「次の家はあちらに?」
「いや、まあ……どうしようかな……ははは」
「失礼ですが、ひとつお聞きしていいですか……?」
ルチルは
気遣わしく思ってはいるが、その目はきちんとウサヒコの方を向いていた。
「どこか遠い、外国の方とは昨日お聞きましたが……そちらではお仕事は何を?」
「…………」
「こちらに永住されるのですか? シディアさんと、ルビィさんの事が心配なのはわかりますが、まずはお仕事を……」
「ルチルちゃん。ウサピィさんはね、立派なビヨウシさんなんだよ?」
「ビヨウシ……?」
「二つ名は『
大いなる太陽の鋏手』!」
「えぇ、二つ名……!?」
「いや、まあ……国家資格だからな、美容師は。……二つ名はまあ、あれだ」
ウサヒコはルチルに
萎縮し、目が泳ぐ。
「ビヨウシとは……一体どんな
職業なんですか?」
「髪を切るの!」
シディアはまるで自分のことのように自慢する。
「髪を切る……? 変わった職ですね……聞いたことがないです」
「いや、まあ。そうだ。この国では自分で髪を切っているんだってな」
「髪は魅力の源、魔力の根源で……自分の魅力は自分がよく一番知っています。他人さまに切っていただかなくても自分で切ったほうが安心ですからね」
「…………」
ウサヒコは怒っているのか、悩んでいるのか何とも言えない顔をしたが、ルチルは正直に答えた。
「申し訳ありませんが、ビヨウシと言う職はこの国には必要、ないのかもしれませんね……」
「魔法を使わない人の髪は切れないか? 俺はこれしか能がないんだ」
「貴族ではない方も、ご自分で切っていたり、母や父に切ってもらっています。先祖代々の髪型をお持ちの方もいらっしゃいますから、髪を切るだけで生計を立てるのは難しいかと……」
ガラス越しに見える行き交う人々。その髪型はただ下ろしただけの髪が多い。ただのばっつり切ったロングのストレート、おかっぱ。すべて段すら入っていない。個性があるのは前髪だけ。たまに違う髪型を見つけるが、シディアのような三つ編みや、ポニーテール。ウサヒコは肩をおとした。
「ルチルちゃん! ウサピィさんはすごいんだよ!」
ルチルはシディアの声に面食らう。
「ルビィちゃんの髪を切ったらね、ルビィちゃんの魔力がものすごく上がったの!」
「ええ? でも髪を切るだけでは、ふたりは養え……」
「だから、ウサピィさんはスパゲティ! スパゲティが来ましたよ! ウサピィさん!」
シディアは肩を落としているウサヒコの上半身を思い切り揺さぶった。
「だあああああ! わかった、わかったから! 嬉しいのはわかったから! 落ちつけ!」
ルチルは目をまんまるにして。えくぼを作る。
「――本当、ウサピィさんはシディアさんのお兄さんですね」
今日もシディアはテーブルクロスにミートソースを散らした。
*
レストランを後にして、シディアは思い出す。
「あっ。
獅子、星光煉獄波を提出しなきゃ……」
「えへへ。ウサピィさん、ルチルちゃん。ギルドに寄ってもいいかな?」
「はい、もちろん」
ウサヒコはわけもわからず、シディアとルチルの後についてゆく。
――魔法ギルド。その建物は古代の神殿のような石柱が目立つ。イオリア式の柱で出来た入り口からは、魔法使いと思われる人々の出入りが見える。ウサヒコとルチルは外でシディアを待った。ウサヒコはドラゴンの石像にもたれかかって。
「ここは一体、何をする所なんだ?」
「ここは魔法を扱える者を登録する場所。平たく言えば、魔法使いがお仕事をもらう事務所のような所です。他には個人単位で習得魔法の管理などもしています」
ウサヒコは巨大で、小綺麗にされているギルドを見上げ、この世界における魔法使いという職の社会的立場を改めて理解する。
「ルチルはいいのか? 仕事をもらわなくても」
「わたくしは、ギルドの方が仕事を届けに家に来られるので……」
ウサヒコは目をまんまるにし、感心する。
「へえ。自分から動かなくても、仕事が勝手やってくるのか。すごいじゃないか」
「え?」
そよ風はルチルの金色の髪をさらりとなびかせた。
「ほら、シディアもルビィも半人前で自分の足を使って、仕事を探して取ってきているだろう?」
ウサヒコは笑う。
「たとえ一人前でも、仕事はなかなか自分から歩いてこない」
「だから、ルチルはたくさんの人々に認められているんだよ。すごいじゃないか」
ルチルはウサヒコの笑顔と、自分を褒めてくれたことにはにかむ。なびいた髪が表情を軽く隠し、彼女は風に少し感謝した。
出入り口からシディアの姿。彼女は手をふり、こちらへ向かってくる。ルチルは手を振り返した。手を振ってもらい、シディアは嬉しくなり走ってくる速度が上がる。
シディアは思い切りルチルに飛びついた。
「――ルチルちゃん、お待たせ!」
「きゃっ」
ルチルはシディアに抱きつかれ回転。後ろにこけそうなり、ウサヒコが片手でルチルの
花車な腰を支えた。
「――おおっと」
シディアはぴょんとルチルから降りた。ルチルはウサヒコの腕につかまり、頬をほんのり赤く染めた。
「あ、ありがとうございます」
「よし、さあ行くか」
「早く帰って、カナブンを絶滅させないとですねっ!」
「もうカナブンはいいんじゃないか?」
商店街に向かって走るシディアの後ろ姿。それを見守り歩くウサヒコ。ルチルは頬を赤く染めたままウサヒコの背中を見つめていた。子犬が頭をなでてほしいように見つめる瞳、まるで陽だまりのような愛情を感じる。それはやさしく、とてもあたたかい。
天気は彼女とは対照的で曇り空。はるか遠くで雷鳴が
轟いた。そよ風は徐々に強くなり、
煌びやかな金色の髪は揺らぐ。空から
風音が目立ってきた。しかし、彼女の耳には雷鳴も風音も届いていない。聞こえるのは自身の高鳴る心音のみ。ルチルは薄いピンクの唇をきゅっと締めて、前を歩くウサヒコに言った。
「ウ、ウサピィ、おにいちゃ……」
ウサヒコは、ただ普通に呼ばれたと振り向き、彼女と視線がぶつかる。
「?」
「――ええっと。ウサピィ、さん。天気が悪いので……早く帰りましょう?」
「ああ、そうだな」
何かを予兆するように曇り空から、ふたたびゴロゴロと雷鳴が
轟いた。
ルチルの頭上に小鳥たちが飛んでいた。小鳥たちは嵐にそなえてコルサーンの森の巣穴へ向かう。仲良くいっしょに高度を上げ、ルベールの街の上空へ。空から崩れ落ちた橋が見えた。
崩れ落ちた橋、下敷きにするはシディアとルビィの秘密基地、ゴミと化した家屋。その姿は黒焦げで
無様。肩を揺らし、静かに笑い続ける女がそこにいた。
ユーディ・オペラモーヴ。風に揺れる桃色のツーサイドアップは
戦闘髪型。魔法戦闘用のクロークを身に
纏い、シディアの焼け焦げた魔法辞典の残骸を踏みつけた。ユーディは唇をにたあと、さらに醜く歪ませる。
「危険人物ルビィ・スカーレット……貴様はルチル・ゾンネンゲルブの仲間。拘束だけでは生ぬるい」
彼女は瓦礫にドラゴンロッドを振りかざした。頭上の詠唱サークルは光り輝き、身体の芯から皮一枚へ桜色の魔力がほとばしる。ロッドの先に集まる魔力、収束する波動。溜まった魔力の塊は釘打ち機、ネイルガンのように勢いよく百の矢を飛ばす。風を斬り、それは瓦礫に突き刺さり続けた。噴き上がる地の煙。容赦なく放たれる矢の数の多さから、やさしさ、あたたかさは微塵も感じることができない。
硬度物質具現化魔法特有のヒュンヒュンと耳に残る
連続不協和音は瓦礫を跡形もなく土にかえした。舞い上がった
砂埃は何もかも隠したが、ユーディの桜色の人影だけはっきりと見える。
砂埃を溢れた魔力で吹き飛ばす。無理矢理作った突風、上空まで舞い上がった魔力の風は彼女の目に映る灰色の空を一瞬、
彩なした。彼女は瓦礫を完全に消し去ったことを確認し、
気炎万丈。
上空の小鳥たちは桜色の魔力に心を
惑わされ、飛ぶことを忘れた。すぐに
墜落し、固い地面に叩きつけられた。彼女は空を見て、ふとシディアの顔を思い出す。それは
曇天を汚いと感じたからだ。
地上から空を見下し、鼻で笑う。そして、三度目の雷鳴と強い風音。
――憎しみが炎のように燃え上がっている今のユーディには小鳥たちの息絶えた姿も、雷鳴も風音も気がつくことができなかった。
