女が家事・育児をしているシーンを見るだけで怒りを感じる人がいるようです。
- 夫が受ける「妻からの家事ハラ」調査にネットで批判 「夫の家事は手伝いじゃない」「指導はハラスメントなのか」 (J-CASTニュース)
- (ニュースQ3)ママだけ家事・育児に奮闘? CMの表現に議論 (朝日新聞デジタル)
「共働きなのに夫が家事を『手伝う』というのはおかしい」
坂井真紀さん演じる女性が仕事も家事もこなすが、夫は朝食を取る子どもの後ろでパソコンをたたいている。
谷岡理香・東海大教授は「人種で描き方を分けたら人権問題なのに、男女だと鈍感になりがち。CMの制作現場に女性が少ないことも影響している」と話す。
しかしながら、"politically correct"であることは、現実社会において標準的・合理的であることを意味しません。
【「女性限定補助金」の効率性】、【日本の女が(相対的に)幸せな理由】、【「女は下」発言を糾弾することの不毛さ】で示したように、怒れる人たちが「地上の楽園」と称賛する男女平等先進国の北欧諸国でも、男と女では業種・職種に大きな違いが見られます。家事・育児に相当する仕事は女、危険な仕事や力仕事、機械操作は男が圧倒的です*1。これが男女の効率的分業だとすると、妻が家事・育児を主に担当、夫が「金を稼ぐ仕事」を主に担当することが、世帯のwork-life-incomeバランスを最適点に導きます(⇒女がパートタイム、男がフルタイム)。これを実践しているのがオランダです。
- Going Dutch (Slate)
Though the Netherlands is consistently ranked in the top five countries for women, less than 10 percent of women here are employed full-time. And they like it this way. Incentives to nudge women into full-time work have consistently failed. Less than 4 percent of women wish they had more working hours or increased responsibility in the workplace, and most refuse extended hours even when the opportunity for advancement arises.
Dutch psychologist Ellen de Bruin explains that key to a Dutch woman's happiness is her sense of personal freedom and a good work-life balance.
もちろん、これとは異なる家事・育児分担が最適の世帯はいくらでも有りえますが、だからといって、一般的傾向に基づく「標準」を否定することは、自分の価値観の押し付けに過ぎません。自分を正しいと信じて疑わない「標準ではない」人たちが、標準的な分担をする世帯に波風を立てようとしているように見えます。*2
怒れる人たちの不思議なところは、男の役割になっていることにはクレームを付けないことです。たとえば、男女のカップルや家族連れが長距離ドライブする設定のCMやドラマでは、男が運転することが多いのですが、それに対して「男に運転を押し付けている」「男に運転させる女は何様のつもりか」「人権問題」と激怒する人はいないようです。*3
このダブルスタンダードは、デートの支払いと共通します。
- デートの支払いには及ばない男女均等化
- Men Still Paying For Dates ... And Women Are Partly Responsible(The Huffington Post)
"One of the reasons we are interested in looking at who pays for dates is because it is one arena where women may be resisting gender changes more than men," ... "As social roles start to change, people often embrace the changes that make their lives easier, but resist the changes that make their lives more difficult."
"Similarly, many women resist changes to gendered practices such as chivalry, and paying for dates, because paying for dates places a burden on them."*4
自分の負担を減らすことは積極的に要求するが、負担が増えることには頑強に抵抗するというダブルスタンダード、要するに利己主義です。
労働力減少と少子化が進む日本には、男女の選好・適正を活かした分業体制と子育て支援体制の整備が必要ですが、それが"politically correct"なものでないことは確かでしょう。
家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの (岩波新書)
- 作者: 竹信三恵子
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[参考]
男女の選好・適性の違いは、大学の学部選びにも反映されています。
(注)京都大学の4年制医学部の前身は、看護の医療技術短期大学部です。6年制薬学部は薬剤師養成、4年制薬学部は薬学研究者養成が目的です。