「3.11以降、既存メディアの信頼が毀損された」
―テレビ報道がネットで代替される部分もあるのではないかという議論も出てくると思います。テレビマンとしては、ニコ生の"会見全編そのまま生放送"のようなものを見ていて、やっぱり適切に編集した方がいいと思うのか、CMも編集も気にせず全部見ることができるのは視聴者にとっても良いことだと思うのか、どちらなんでしょうか。
安倍:もちろん、そういうことがネットで行われていることは知っていると思いますが、多くのテレビマンは見ていないと思います。局員のネットリテラシーは驚くほど低いですから。僕はTwitterを実名で始めたのも早かったし、利用できるものは利用したほうがいいんじゃないか、というスタンスでしたが。
だからこそ、テレビからネットに配信していくということもどんどんやったら良いと思います。ただテレビの映像をネットに垂れ流すのではなく、ネット用に撮影したものを流すとか、編集し直すのも良いと思います。そんなにお金をかけなくてもいいんですから、ハンディカメラで撮った名物記者の解説動画でも良いと思いますよ。
―ご著書の中で、「テレビはなぜネットに勝てないのか」というトピックがありますが、現実問題として、ネットメディアと比較すれば、取材力もノウハウもリソースも、圧倒的にテレビの方が持っていると思いますが。
安倍:ネットの世界で何が起きているかということも、多くの局員が知らないと思います。例えば、芸能人の薬物問題を追いかけている女性のインタビューが某局のニュースで流れて、ネット上でテレビ局のヤラセ・仕込みじゃないか、と話題になりましたよね。そのテレビ局の知人に「めちゃめちゃdisられてるよ」と伝えて、聞いてみました。一人は幹部、一人は中堅の記者でしたが、「なにそれ?」と言っていましたから。
ネットであれだけ騒ぎになっているですから、「たまたま撮っただけだ」というならば、Twitterの公式アカウントでそうつぶやけばいいと思います。そうしないから、ネット上では"真相は闇の中"みたいになってしまう。「編集してる」「操られてる」「韓流押しだ」みたいな話もそうですよね。中の人は一生懸命、24時間汗水垂らして取材しているのに、気の毒だなと思うんですよ。僕も震災直後、講演で「お前の局は噓ばかり流してんじゃない!」と怒鳴られたこともありますし。
確かに、テレビが相手にしている視聴者の全体からすれば、ネットはクローズドな世界だとは思います。ただ、拡散力もあるし、3.11以降、既存メディアの信頼が毀損された部分もあると思うんです。ネット上で“マスゴミ”と言われるような動きが、加速したという感じがするんです。ただ一方で、それにピンと来てないテレビの中のも大勢いると思いますが…。
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