長崎原爆の日:恒久平和を祈り…

毎日新聞 2014年08月09日 23時11分(最終更新 08月10日 00時07分)

祭壇に向かい教会を移動する被爆マリア像=長崎市の浦上天主堂で2014年8月9日午後7時52分、須賀川理撮影
祭壇に向かい教会を移動する被爆マリア像=長崎市の浦上天主堂で2014年8月9日午後7時52分、須賀川理撮影

 69回目の長崎原爆の日を迎えた長崎市で9日、平和祈念式典が開催された。田上富久市長は平和宣言で、安倍政権が閣議決定した集団的自衛権の行使容認に言及し「平和の原点がいま揺らいでいるのではないか」と語った。政府の安全保障政策を巡る首相と被爆者の溝は深まっている。

 長崎市の浦上天主堂では同日夜、平和祈願ミサがあった。天主堂内に安置されている「被爆マリア像」が祭壇に飾られ、信者が恒久平和を願った。

 例年はミサの前に、被爆マリア像を平和公園から天主堂まで運び、犠牲者の冥福を祈る「たいまつ行列」が実施されているが、台風11号の影響で中止になった。

 平和公園での式典には、被爆者や遺族ら約5900人が参列し、キャロライン・ケネディ駐日米大使ら海外48カ国の代表も出席。

 安倍晋三首相はあいさつで「『核兵器のない世界』を実現するための取り組みをさらに前に進める」と述べたが、2007年の第1次政権時の「憲法の規定を順守」とする発言はなく、安全保障政策にも触れなかった。田上市長は、6日の広島市の平和宣言が言及しなかった「集団的自衛権」の文言を盛り込み、「『戦争をしない』という誓いは被爆国・日本の原点。その原点が揺らぐことに対する不安と懸念の声に真摯(しんし)に向き合い、耳を傾けることを強く求める」と続けた。「平和への誓い」を読んだ被爆者代表の城臺(じょうだい)美弥子さん(75)も集団的自衛権行使容認を「日本国憲法を踏みにじる暴挙」と厳しく批判した。【小畑英介】

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