【動画】台風11号の影響で高い波が打ち寄せる高知県室戸市の港=根岸敦生撮影
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 台風11号は9日、各地に被害をもたらしながらゆっくりと北上した。三重県では大雨特別警報が出された。各地の避難所では多くの人たちが不安な一夜を過ごした。停電も相次いだ。交通機関は大きく乱れ、お盆を前にふるさとへの帰省や旅行を予定した人たちに影響が広がった。

 「自分の家がどうなってしまうのかとても心配だ」。幅120メートル、長さ340メートルにわたり地滑りのおそれが出ている高知県大豊町大平(おおだいら)地区の都築一久区長(70)は不安そうに語った。6世帯が隣接する集落の民家に避難した。大豊町では約10カ所で道路の亀裂や家屋の傾きなど地滑りの兆候が見つかった。

 9日午後5時50分現在、高知県内では、大豊町のほか、本山町、高知市、馬路村の4市町村154人に避難指示が出された。近くの公民館に身を寄せた高知市土佐山のゆず農家、小松房子さん(79)は「水が湧くように降る。ずっとこの土地に住んでいるが、土砂崩れがこれほど起きる台風は生まれて初めて」。一緒に避難する長男の鐵廣(てつひろ)さん(53)は「雨風でゆずが落ち、収穫量が落ちてしまわないか心配だ」と顔を曇らせた。

 徳島県阿南市椿町では、県道で土砂崩れが発生。9日朝から海沿いの240世帯(約600人)が孤立状態になっているが、緊急車両は通行できるという。愛媛県では西条市、四国中央市、愛南町などで住民が公民館などに自主的に避難。新居浜市では、歩いていた女性(97)が風にあおられて転び、頭に軽いけがをした。高松市でも81歳の女性が強風にあおられて転倒し、軽いけがをした。

 和歌山県では、海南市でがけ崩れが起きて空き家1棟が全壊。串本町でも強風により、車庫が半壊した。いずれもけが人はなかった。また高野町では民家の裏山の土砂が崩れ、室内に土砂が流れ込んだ。当時3人が家にいたがけがはなかったという。

 串本町の大島漁港では9日午前4時ごろ、係留されていた釣り船5隻と漁船3隻の合計8隻が突風にあおられた。釣り船1隻の先端がちぎれ、漁船の側面にひびが入るなどした。

 岡山県では、備前市で9日午後4時に市内全域の1万5927世帯、3万7071人に避難勧告が出された。

 奈良県斑鳩町の法隆寺では、重要文化財の土塀「東院大垣(とういんおおがき)」の2カ所の表面が幅約60センチ、高さ約40~55センチにわたってはがれ落ちた。昨年9月の台風18号で傷んでいたという。