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» 2014年08月07日 14時40分 UPDATE

Wikipedia、「忘れられる権利」めぐるEUの方針に抵抗 削除された記事を一覧に

「忘れられる権利」をめぐる欧州の動きに対し、Wikipediaは「検索結果から削除されたWikipedia記事を一覧にする」という方法で反撃している。「忘れられる権利」についてはプライバシー擁護派と言論の自由の擁護派で意見が分かれている。(ロイター)

[ブリュッセル 7日 ロイター]
REUTERS

 「忘れられる権利」をめぐる欧州の動きを受けて、無料のオンライン百科事典であるWikipediaは「検索結果から削除されたWikipedia記事を一覧にする」という方法で反撃に出た。「インターネットの検索結果に自分の個人情報が表示されることを阻止できる権利」を認めた裁判所の判決を鼻であしらうかのようなやり方だ。

 Wikipediaを運営する非営利団体Wikimedia Foundationは8月6日、これまでに検索エンジンから、合わせて50件以上のWikipediaページへのリンクに影響が及ぶ削除通知を受けとったことを明らかにした。

 欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)が2014年5月、「自分の名前が検索された際に不適切な個人情報や古い個人情報が表示されることを阻止できる権利」を認める判決を下したことを受け、Wikimedia Foundationは声明を発表し、Wikipediaページへのリンク削除についてはすべて公表する方針を明らかにした。

 Wikimedia Foundationのライラ・トレティコフ事務長は公式ブログで次のように述べている。「欧州では一般向けの説明が何もないまま、正確な検索結果が失われつつある。確かな証拠もなければ、司法審査も、不服申立ての手続きもない」

 「その結果、過去の記録が次々と抹消され、インターネットは不都合な情報をわけなく消せる場になっている」と、同氏は続ける。

 「忘れられる権利」をめぐっては、専門家の見解も分かれており、プライバシー擁護派と言論の自由の擁護派が意見を戦わせている。後者は、欧州司法裁判所の判決によって、人々は自身の過去を取り繕うようになると主張する。

 ただし検索エンジンには、削除要請を検討する際に有名人や公人について特定の情報を知ることに対する市民の関心を考慮に入れることが求められている。欧州司法裁判所は、「情報の自由とプライバシーの間でバランスを取る必要がある」と述べている。

 リンクの削除要請は、記事で名指しされている人だけでなく、コメント部分に名前が挙がっている人も行える。

 「削除したリンクを公表するだけでは、それほど役には立たない。そのページ上のどの名前の削除が要請されたのかは分からないからだ」と、インターネット法を専門とするリリアン・エドワーズ教授は指摘する。

逆効果となる可能性も

 Wikimedia Foundationによれば、Wikipediaは8月6日までに検索エンジンから5件の削除通知を受け取っており、その影響は英国、イタリア、オランダ版Wikipediaの合わせて50件以上のリンクに及ぶという。

 欧州での検索の約90%を扱う検索エンジン大手の米Googleは、「忘れられる権利」に基づく削除要請を7月18日までに9万件以上受け取っており、その過半数に応じているという。

 Googleは、削除要請に基づきリンクを削除した事実をサイトの運営元である出版社に通知したことで批判を受けている。このやり方では、問題になっているページに余計に注目を集め、誰が要請したかをめぐる憶測をあおることになりかねないからだ。

 「われわれが懸念しているのは、こうした削除通知が多くの混乱を引き起こし、人々の名前をあらためて公にすることで削除要請そのものの価値を幾つかの点で損なうことだ」と、仏プライバシー監視機関のイザベル・ファルク・ピエロタン委員長はReutersの取材に応じ、語っている。同氏は、EUの国家データ保護機関で構成される第29条データ保護作業部会(WP29)のトップも務めている。

 Googleは「透明性の確保が必要」と考えており、著作権侵害を理由に検索結果から削除されたWebサイトについては既に所有者への通知を行っている。

 Wikimedia Foundationは、「言論の自由と透明性のために削除通知を公表する」と語っている。

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