2014/8/8 21:32

クロイツィゲル問題でティンコフ・サクソ側が激怒
一体どうなっている?クロイツィゲルが過去のバイオパスポートに関する案件で暫定的に出場停止処分に、ティンコフ・サクソ側は猛抗議、UCIは過去のグレーゾーンを追及の構えか?
旧UCI体制が残していった負の遺産が、またひとつここへ来て選手とチームを苦しめている。しかしそれと同時に今回の一件に関しては、現在のUCI体制の対処のあり方にも問題がある様に感じられる。一体レースとは誰が主役なのか、それをもう一度きちんと考えるべき時にきているのではないだろうか。
事の発端はツール・ド・フランス直前になり、UCIがクロイツィゲルの2011〜2012年シーズン中(アスタナ所属時代)のバイロジカルパスポートの数値の上下動が不自然であることを公の場で指摘したことだ。それに伴いCAFD(自転車アンチ・ドーピング協会)が正式に調査を開始することが決まり、それにより所属チームのティンコフ・サクソは出場停止処分が課されていないものの、自発的に急遽クロイツィゲルの出場を見合わせ、ラファル・マイカをピンチヒッターとしたのだ。そしてツールが終わり、今開催中のツール・ド・ポローニュにクロイツィゲルが出場準備している段階となり、突然UCIが暫定的に出場停止処分を課したのだ。しかしそこまでの対応と、ここでの腑に落ちない説明がティンコフ・サクソ側を激怒させることとなったのだ。
簡単にまとめるとUCI側の説明では、「出場をした場合、後に結果が剥奪されるケースも有り得、そうなればすべての順位変更など仕事が増える形となるので、であれば最初から出ないで欲しい。」と、一方的なものであるとともに、今回のバイオロジカルパスポートの一件での出場停止ではなく、その結果が出た際の手間を省くためというニュアンスがつたわってくるのだ。
これに対しティンコフ・サクソのオレグ・ティンコフオーナーが大激怒、UCI に対する法的措置も持さない構えなのだ。
まずティンコフ・サクソ側が激怒している理由の一つが、そもそものツール前の発表も、今回の出場停止処分もレース直前であり、出場選手登録など様々なチーム運営にも影響を及ぼす、チーム側への配慮が一切ない対応だということだ。またそれに加えて、クロイツィゲルの扱いが”有罪ありき”とも取れるような対応であり、本人の直接聞き取りなども一切ないままに一方的に判断されたことに対し、人権無視のやり方だと痛烈に批判している。
ティンコフ・サクソ側は公式にUCI会長ブライアン・クックソン宛に抗議の書簡を送り、それを公開、そしてオレグ・ティンコフは法的措置にとどまらないさらなる一手を考えていることを既に公表している。今や自転車レース界の首領となりつつあるオレグ・ティンコフ、あれだけ渋っていたサクソバンクがすでに来シーズン以降のスポンサー継続を決定するなど、チームの経営手腕とレースに対する並々ならぬ情熱は、様々なスポンサーや業界関係者を動かそうとしている。
「UCIはアマチュアで独裁的だ。彼らの決定が自転車界のこれからの発展と経済基盤に直接影響してくることを全く理解していない。」とコメントしたオレグ・ティンコフは、今回の裁判をスポーツ仲裁裁判所ではなくロンドンの裁判所へ持ち込むつもりだ。現UCIの基板となっているイギリスで、今回の一件でチーム側が被っている損害に対する責任の所在を追求する構えだ。「バイオロジカル・パスポートに関する規則では、クロと認定されるまでは処罰されないことになっていたにも関わらず、今回はグレーの段階、しかも調査すら十分に行われていない段階でのフライングとも取れるUCIの処分には納得しかねる。そんなルール変更が行われたのであれば、いつから施行されたのかをはっきりとしてもらいたい。」と強気の構えだ。
すでにBMC、そしてのオーナーなど複数のチームオーナーがオレグ・ティンコフに賛同しており、今回の結果如何ではUCIから独立した自転車競技団体の発足に関する議論が再燃しかねない状況だ。既にツール主催団体でもあり自転車レース界の中心団体でもあるASOもオレグ・ティンコフ側の言い分に賛同を示している節もあり、今回の一件は今後に大きな影響を与えそうだ。
そもそもがずさんすぎた旧UCI体制下での調査の再検証に始まり、過去にさかのぼった段階でのバイオロジカルパスポートの数値の再確認で発覚した今回の件、前UCI体制がきちんと検証をしていればそもそも起きなかったことなのだ。しかし現UCI体制のクロイツィゲルに対する今回の対応も酷いものであり、これがまかり通っていいはずはない。グレーを罰するなとは言わないが、全てはその段階で明確に示されているルール下で行われない限り、権力団体は何でも許されてしまうというある種”職権乱用”に繋がってしまいかねない。選手たちあってこその自転車レース、そして選手あってこその統括団体であるという基本を忘れては、今後の発展に大きな足かせとなりかねない。
ただティンコフ・サクソの動きも、あまり大きくなりすぎればレース界を牛耳りかねない危険性をはらんでいると指摘する声もあり、また割り切ったビジネスライクすぎるとの指摘もある。どう転んでも現状では全てが一筋縄ではいかない状況に来ている。
誰が正しくて、どの結果が正しいのか以前に、なにか大切なモノが置き去りにされ議論だけが独り歩きしている気がしてならない。選手、そしてファンあってこそのレースであることを今一度きちんと感じ、考えてもらいたい。
H.Moulinette
『クロイツィゲルは飼い殺し状態 ©Tim D.Waele』 |
簡単にまとめるとUCI側の説明では、「出場をした場合、後に結果が剥奪されるケースも有り得、そうなればすべての順位変更など仕事が増える形となるので、であれば最初から出ないで欲しい。」と、一方的なものであるとともに、今回のバイオロジカルパスポートの一件での出場停止ではなく、その結果が出た際の手間を省くためというニュアンスがつたわってくるのだ。
『吠える男オレグ・ティンコフ ©Tim D.Waele』 |
まずティンコフ・サクソ側が激怒している理由の一つが、そもそものツール前の発表も、今回の出場停止処分もレース直前であり、出場選手登録など様々なチーム運営にも影響を及ぼす、チーム側への配慮が一切ない対応だということだ。またそれに加えて、クロイツィゲルの扱いが”有罪ありき”とも取れるような対応であり、本人の直接聞き取りなども一切ないままに一方的に判断されたことに対し、人権無視のやり方だと痛烈に批判している。
ティンコフ・サクソ側は公式にUCI会長ブライアン・クックソン宛に抗議の書簡を送り、それを公開、そしてオレグ・ティンコフは法的措置にとどまらないさらなる一手を考えていることを既に公表している。今や自転車レース界の首領となりつつあるオレグ・ティンコフ、あれだけ渋っていたサクソバンクがすでに来シーズン以降のスポンサー継続を決定するなど、チームの経営手腕とレースに対する並々ならぬ情熱は、様々なスポンサーや業界関係者を動かそうとしている。
『この男が今自転車界の命運を握っている ©Tim D.Waele』 |
すでにBMC、そしてのオーナーなど複数のチームオーナーがオレグ・ティンコフに賛同しており、今回の結果如何ではUCIから独立した自転車競技団体の発足に関する議論が再燃しかねない状況だ。既にツール主催団体でもあり自転車レース界の中心団体でもあるASOもオレグ・ティンコフ側の言い分に賛同を示している節もあり、今回の一件は今後に大きな影響を与えそうだ。
そもそもがずさんすぎた旧UCI体制下での調査の再検証に始まり、過去にさかのぼった段階でのバイオロジカルパスポートの数値の再確認で発覚した今回の件、前UCI体制がきちんと検証をしていればそもそも起きなかったことなのだ。しかし現UCI体制のクロイツィゲルに対する今回の対応も酷いものであり、これがまかり通っていいはずはない。グレーを罰するなとは言わないが、全てはその段階で明確に示されているルール下で行われない限り、権力団体は何でも許されてしまうというある種”職権乱用”に繋がってしまいかねない。選手たちあってこその自転車レース、そして選手あってこその統括団体であるという基本を忘れては、今後の発展に大きな足かせとなりかねない。
ただティンコフ・サクソの動きも、あまり大きくなりすぎればレース界を牛耳りかねない危険性をはらんでいると指摘する声もあり、また割り切ったビジネスライクすぎるとの指摘もある。どう転んでも現状では全てが一筋縄ではいかない状況に来ている。
誰が正しくて、どの結果が正しいのか以前に、なにか大切なモノが置き去りにされ議論だけが独り歩きしている気がしてならない。選手、そしてファンあってこそのレースであることを今一度きちんと感じ、考えてもらいたい。
H.Moulinette