あまりに非常識な長時間労働である。早急な是正が求められる。

 牛丼チェーン「すき家」の過酷な職場実態が、運営会社のゼンショーホールディングスが設置した第三者委員会の調査報告書で明らかになった。

 1か月の勤務が500時間を超え、2週間も帰宅できない。深夜の店を1人で任されトイレにも行けない。こうした無理な勤務体制が常態化していた。

 労働基準監督署から再三、法令違反を指摘されていたのに、会社が根本的な対策を怠ってきた。

 従業員の健康さえ軽視した経営姿勢は、看過できない。

 すき家は、激務に関する情報がネットなどで広がり、希望者の激減で必要なアルバイトを確保できなくなった。多くの店舗が一時休業を余儀なくされ、ゼンショーは今年度、創業以来初の赤字決算に転落する見通しとなった。

 従業員に過重な労働を強いてきたツケである。あくなき店舗網の拡大と、労働コストの切り詰めで利益をひねり出すビジネスモデルの欠陥を露呈したと言える。

 小川賢太郎会長兼社長は記者会見で、「すべての店で24時間営業する方針は変更する」と述べ、9月末までに深夜の1人勤務を解消する考えを表明した。

 無理なく働ける職場環境づくりを急がねばならない。

 すき家だけでなく、競争の厳しい外食チェーン業界では、長時間労働などを苦にした従業員の自殺や、残業代ゼロで酷使される「名ばかり管理職」の存在が、これまでも批判されてきた。

 大量退職や採用難は、自社の労働環境が不当に厳しいことを示すサインとなる。こうした兆候のある企業は、すき家を「他山の石」とし、勤務体制や処遇に問題がないか確認すべきだろう。

 2012年度に過労による心疾患などで労災認定された人は、2年連続で増加した。精神疾患による労災も5割近く増え、過去最多となった。深刻な事態だ。

 政府は、今年成立した過労死防止法に基づき、実効性のある対策を講じる必要がある。

 厚生労働省が、過重労働などの疑いのある企業約5000社を調べたところ、8割で法令違反が見つかった。

 取り締まりにあたる労働基準監督官は、労働者1万人あたり0・5人で、多くの主要国を下回っている。政府は、違法行為の監視・摘発体制が十分かどうか、しっかり点検してもらいたい。