エイズウイルス(HIV)検査で陽性と診断された福岡県内の20代の元看護師が、検査した大学病院から無断で伝えられた診断結果によって退職を余儀なくされたとして、勤務していた病院に約1017万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁久留米支部は8日、約115万円の支払いを命じた。
須田啓之裁判長は判決理由で「患者を感染させる危険性は認められず、配置転換などを検討せずに休みを強いた」として、病院側の違法な就労制限を認めた。
さらに「病院側が診療目的の検査結果を労務管理に使ったのは明らかで、感染者への偏見や差別があるなか、感染情報を本人の同意なく使うのはプライバシー侵害に当たる。元看護師は勤務の継続に精神的苦痛を感じた」と指摘した。
判決によると、元看護師は2011年8月、福岡県内の大学病院で受けたHIV検査で陽性と診断された。大学病院から検査結果を無断で伝えられた県内の勤務先の病院は、感染を理由に休職させ、元看護師は同年11月に退職した。
勤務先の病院側は「医療従事者がHIV感染している場合は院内感染のリスクがある。病欠を強要していない」と主張していた。
元看護師は大学病院側にも損害賠償を求めていたが、昨年4月、和解が成立していた。〔共同〕
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