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Unus pro omnibus, omnes pro uno

日本経済に迫り来る「1945年」

今年上期(1~6月)の経常収支が赤字に転落しました。

下げ止まり感は出てきたものの、東日本大震災後の貿易収支の悪化が響いています。

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貿易収支の悪化については、【日本経済へのトリプルパンチ~燃料高・大震災・アップル】で

  1. 鉱物性燃料価格の高騰
  2. 東日本大震災後の企業の海外シフト
  3. エレクトロニクス産業等の国際競争力の喪失

を主な要因として挙げました。2.と関連する直接投資は、高水準を維持しています。

貿易収支の悪化の輸出側の要因は、円安にもかかわらず輸出数量が伸び悩んでいることですが、その背景には2.と3.があります。戦後の日本経済を支えてきた「強い製造業」も、ミッドウェイ海戦後の日本海軍、あるいはソ連参戦直前の関東軍のような状態になりつつあるようです。

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輸入側の要因として大きいのが、1.の鉱物性燃料価格の急騰です。数量はほぼ横ばいを続けていますが、価格が10年前の3倍に高騰しています。 

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2011年以降、ドルベースでの価格上昇は止まっていますが、2012年後半からの円安のために、円ベースでは値上がりしています。

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貿易収支を鉱物性燃料とそれ以外に二分すると、過去1年間の累計で鉱物性燃料は26.7兆円の輸入超、その他は12.4兆円の輸出超、合わせて14.3兆円の貿易赤字となっています。

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鉱物性燃料価格の高騰は、10年前に比べてGDPを約4%減少させる効果に相当します。第二次石油危機後、長らく日本経済にとって軽い負荷にとどまっていた石油・ガス(チープオイル)が重荷に転じ、国内の所得増加を妨げています(⇔産油国への所得移転)。

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労働力人口の急減、「電子立国」の瓦解、鉱物性燃料価格の高騰と、日本経済にとっては悪材料が目白押しです。短期はともかく、長期的な見通しは極めて厳しいと判断せざるを得ません。

1945年が再びやってくるようです(そう言えば、一週間後は8/15でした)。

 

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