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 ●処理汚染水、海に放出計画

 東京電力と政府が7日、相馬双葉漁協の理事会に説明した、福島第一原発の建屋周りの汚染地下水をくみ上げて浄化し、海に放出する計画。東電は「丁寧に説明していく」としたが、漁協理事らからは不安や不信の声が続出した。同原発構内山側の井戸の地下水放出を苦渋の決断の末に了承した漁協は、さらに難しい判断を迫られている。

 東電福島復興本社の新妻常正副代表と政府の原子力災害対策本部の野田耕一廃炉・汚染水対策現地事務所長による説明は、非公開で1時間以上にわたった。

 新妻氏は「この計画は増え続ける汚染水を抑制するための中長期の抜本策の重要な柱。以前から地元には説明してきた」と強調。放射性物質を取り除く浄化施設を建設中で、海への配水施設などの国への申請手続きに近く入りたいなどと説明したという。

 これに対し、佐藤弘行組合長は理事会終了後、「漁業者も県民も計画を知らなかった」と批判。理事会の席では別の理事たちからも「時期尚早で唐突」「基準値超の地下水が出た場合の安全対策に納得できない」などの批判や懸念の声が続出したという。

 漁協は3月末、原子炉周辺よりも汚染が少ない山側の井戸の地下水を海に放出する「地下水バイパス」を容認したばかり。東電はこれまでに約2万トン放出したが、汚染水の増加を遅らせる明らかな効果はまだ出ていない。

 ただ、汚染水対策の重要性は漁業関係者も熟知している。相双漁協原釜支所青年部役員の石橋正裕さんは「原発事故の早期収束のために放出は理解せざるを得ない部分もある」と言う。だが、安全性や風評への懸念は拭えず、「どこまで放射能を減らしたのかなど、明確で透明性のある情報提供が条件だ」と注文をつける。

 一方、県の渡辺仁・原子力安全対策課長は「原子炉周辺の井戸には、トリチウム濃度が何十万ベクレルのものもある。浄化してもトリチウムは残るので、運用方法の検討が必要だ」と話す。

 「漁業者の理解なしに進めることはしない」とする東電は、いわき市漁協に8日に説明した後、浄化施設のデータなどを集めた上で漁協に組合員への説明会開催を要請する考えだ。

 地下水バイパス計画を漁協が了承するには1年以上かかった。佐藤組合長は、今回は「それ以上の時間がかかるだろう」と語った。