日銀総裁:目標達成にリスク生じれば当然、金融政策の調整行う
8月8日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は8日午後の定例記者会見で、「あくまで日銀の政策目標の第一は物価の安定だ」としながらも、物価に重大な影響を与える要因に動きがあり、目標達成にリスクが生じれば、「当然金融政策の調整は行う」と述べ、成長率が今後大幅に下振れた場合などに追加緩和を行う可能性を示唆した。
今後成長率が下振れたとしても、物価が想定通り推移していれば、追加緩和は必要ないのか、という質問に対して、黒田総裁は「あくまで日銀の政策目標の第一は物価の安定だ」としながらも、「消費者物価の動きだけみているわけではない」と言明。「物価に重大な影響を与える要因に動きがあり、目標達成にリスクが生じてくれば、当然金融政策の調整は行う」と述べた。
黒田総裁は「このところ輸出や生産に弱めの動きが見られる」と語った。輸出や生産の落ち込みを受けて、13日発表される4-6月の実質国内総生産(GDP)成長率はエコノミストの見通しの下方修正が相次ぎ、ブルームバーグ・ニュースの予想中央値で前期比年率7.1%減とマイナスが見込まれている。
日銀は14年度の成長率見通しについて、4月、7月と2回連続で下方修正し、足元では1.0%(政策委員の中央値)まで低下している。
潜在成長率下回ることはない10月の展望リポートでさらに下方修正し、0.5%前後とみられる潜在成長率近辺まで低下した場合、金融政策の調整を行うのか、という質問には、「今後、成長率が0.5%前後、あるいはそれ以下だと言われているような現在の潜在成長率を下回るようなところに行く可能性はあまりないと思う」と述べた。
「もちろん、4-6月は1-3月の反動でマイナス成長になると思うが、基調としての日本経済の回復、成長は続いていると思うので、展望リポートで示したような成長が今年度、来年度、再来年度と続いていくという見通しに変わりはない」と述べた。
個人消費については「確かに消費税率引き上げに伴う反動減が引き続きみられるが、全体としてみればその影響は徐々に和らぎつつある」と指摘。先行きも「税率引き上げによる実質所得押し引き下げの影響を含め注意深く点検する必要はあるが、基本的に雇用・所得環境の着実な改善が続いていることを踏まえると底堅く推移していく」と述べた。
鉱工業生産については「駆け込み需要の反動減や、輸出のもたつきといったことから弱めの動きになっているが、予測指数や企業ヒアリングの結果を踏まえると、基調としては緩やかな増加を続けていると評価できる」と指摘。
さらに、「企業の業績や企業マインドは総じて良好な水準にある。企業の積極的な投資スタンスは維持されている」とした。「このようにわが国経済は企業、家計両部門で景気の前向きメカニズムは維持されているので、先行きも緩やかな回復基調を続けるとみている」と述べた。
円安は経済にプラスの影響円安で物価は上昇したが、輸出が伸びてないことなどを考えると、経済全体に与える影響は差し引きプラスなのか、という質問に対しては「輸出数量が思ったほど伸びていないことは事実だ」としながらも、「企業収益は大幅なプラスになっていて、それがかなり強い設備投資計画を支え、足元で設備投資も出てきている」と話した。
その上で、「行き過ぎた円高が是正されたことは日本経済にとってかなりプラスになっている」と述べた。今後についても「何か、円の為替レートが円高になっていかなければならない理由はないと思っている。それがまた、日本経済にとってマイナスになるということもない」と語った。
電力料金値上げは経済に影響ウクライナやイラクなど地政学的リスクについては「このところやや高まっているきらいがある」と指摘。「今後、世界経済に与える影響がどうなのかよく注視していきたい。今の段階で大きな見通しの変化が起きているわけではないが、十分注意してみていきたい」と述べた。
北海道電力が最近、電力料金再値上げを申請した。こうした電力料金の値上げが全国に広がった場合の影響については「電力料金値上げは特に電力を多く消費する産業にとって相当コストアップ要因になるので、その影響は十分注視していく必要がある」と指摘。電力料金が「値上がりした方が経済に影響があるというのはその通りだ」と語った。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
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更新日時: 2014/08/08 18:18 JST