東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

核廃絶 日本人と一緒に 広島原爆 韓国人犠牲者悼む

原爆犠牲者へ慰霊歌をささげる女性ら=5日、広島市中区の平和記念公園で

写真

 広島への原爆投下から六日で六十九年となるのを前に、広島市の平和記念公園内で五日午前、韓国人被爆者の慰霊祭があり、二万人ともいわれる韓国人の原爆犠牲者の霊を慰めた。

 慰霊祭は在日本大韓民国民団(民団)の広島県地方本部が主催し、民族衣装に身を包んだ女性らが舞をささげた。同本部団長の沈勝義(シムスンウィ)さん(57)は「北朝鮮の核開発や日本の集団的自衛権など北東アジアはいまだ平和安定とは遠い」と追悼の辞を述べ、「在日かは関係なく、広島県人として核のない平和を願っている」と語る。

 だが、日本からの願いは、母国で暮らし続ける人には少し受け止められ方が異なるという。沈さんは「日本人が被害を訴えても、『加害者じゃないか』となってしまう」と話す。

 「わしらは原爆で解放されたんだ」。在日二世の被爆者李鐘根(イジョングン)さん(85)=同市安佐南区=は、韓国に帰国した際に親戚からそう言われた。李さんにとって原爆は顔を焼かれた苦い記憶だ。

 爆心地から一・八キロ東のJR広島駅近くで黄色い光を見た。すぐに伏せたが、手や顔、首筋にやけどを負い、傷にはうじがわいた。「髪が抜けたら死ぬ」と言われ、毎朝髪の毛を引っ張って生を確かめた。

 李さんは「韓国の若者には原爆投下の事実も、どんな惨状だったかも知られていない」と嘆く。「無差別に殺す兵器で韓国人も犠牲になったと知ってもらい、在日の立場で日本人と平和を訴えていきたい」と話す。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実教授(57)は「侵略を受けた国だけでなく、米国でも原爆がなければ米軍犠牲者が百万人多かったという説が広まり、投下を正当化する声が根強い」と指摘し、「悲惨さだけでなく、武力で解決しようとした戦争の文脈の中で原爆投下を位置付け、非人道性を語っていく必要がある」と話した。 (中崎裕)

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo