【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は7日夜(日本時間8日午前)、ホワイトハウスで緊急声明を読み上げ、イラク北部で勢力圏を広げるイスラム過激派「イスラム国」への限定的な空爆を承認したと明らかにした。状況を放置すれば、少数派住民らの生命がさらに危なくなると判断。米軍は同日、住民向けに人道支援物資を空中から投下したと表明した。
オバマ氏はこれまでイラクの政府軍を支援するための軍事顧問団の派遣にとどめ、空爆を含む軍事介入の判断を先送りしてきた。「イスラム国」への限定的な空爆とはいえ、2011年に米軍がイラクからの撤退を終えた後に初めてとなる軍事介入を承認したことは、イラク政策の大きな転換となる。
オバマ氏は声明で、限定的な空爆を認めた理由に関して「イスラム過激派による大量虐殺への発展を防ぐために行動する必要がある」と強調した。そのうえで「米国はイラクの危機に立ち向かうために幅広い戦略を追求する」と語った。
さらに「米国民が危険にさらされているときに我々は行動を起こす。これが米最高司令官の責任だ」と力説。同時に「数千人の無実な人々が危険にさらされているときに我々は行動する。それが米国の責任だ」と訴えた。一方で「米国はあらたな戦争に巻き込まれることは許されない」とも述べ、地上部隊の再派遣は否定した。限定的な空爆に際して無人機などを使う可能性がある。
イラクでは「イスラム国」が北・中部で勢力圏を広げている。首都バグダッドへの侵攻は政府軍が食い止めているが、北部のクルド自治区ではアルビルなどの主要都市が攻勢にさらされている。オバマ氏は「イスラム国」による支配体制が全土に広がりかねないとの危機感を高めていた。
米政府によると、クルド人の住民ら40人の子どもが高温と脱水症状のために死亡。4万人は十分な食料や飲料水もないまま北部シンジャールの山頂に避難している。
これに先立ちアーネスト米大統領報道官は記者会見で「イスラム国」への対応について「オバマ氏がこれまで明らかにしてきたのは、軍事行動を取る場合は特定の目的で限定的なものだ。地上部隊の派遣を含めた軍事行動はしない」と語った。
クルド人らについては「悲惨な人道問題だ。彼らの健康と安全に関して深く憂慮している」と述べ、対応が急務との考えを示した。
国連安全保障理事会は7日、イラク情勢に関する緊急会合を開催し、「イスラム国」によるイラク北部での攻撃を非難する声明を発表した。
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