1%ではなく0.1%、富のピンポイント集中はむしろ悪化
8月7日(ブルームバーグ):保有資産上位1%の人々がどれほど裕福なのかは計測不能で、文字通り計り知れない。莫大な富が一点に集中する現状は各国から数十億ドル規模の税収を奪い、世界がどれほど不公平なのかわれわれの目に映りにくくしている。
欧州中央銀行(ECB)のエコノミスト、フィリップ・バーミューレン氏とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のガブリエル・ザックマン氏がそれぞれまとめた調査によると、富裕層中の富裕層が蓄えた富はタックスシェルターのおかげで、あるいは調査への協力を拒むことで過少に見積もられている。所得データに見られる同様の欠点を補正すると、1998年から2008年にかけて進展したと思われていた世界の貧富の格差是正は、ほぼゼロに等しかったことが分かると世界銀行の調査は指摘した。
ノーベル賞受賞の経済学者、ジョゼフ・スティグリッツ氏は、「上位1%の資産は過少に報告されているのではないかと、前々から疑っていた」と語る。「社会のシステムは操作され、不公平に捻じ曲げられているとの認識が高まっている」と述べた。
実際の富や所得の規模を正確に把握できないことは、不均衡がどの程度悪化しているのかエコノミストや政治家が適切に理解するのを妨げ、問題の解決を阻んでいる。例えば収入や資産の一点集中が実際より進んでいることが分かれば、税制改革への支持を高めることが可能になるだろうとザックマン氏は指摘する。
0.1%に富の23.5%が集中センター・フォー・エクイタブル・グロース(ワシントン)の上席数学者、カーター・プライス氏は「世界の現状を適切に把握できなければ、政策の効果も見極めにくい」と指摘。「過去を遡って特定の政策がどの程度効果的だったか判断することも難しい」と述べた。
2012年の米国では純資産が2000万ドル(約20億4000万円)を超える富裕層上位0.1%の人々の家計に、米国全体の富の23.5%が集中していた。これはタックスヘイブンに隠された資産の推定額を加え、LSEのザックマン氏がはじき出した数字だ。現在はカリフォルニア大学バークレー校で客員教授を務める同氏は、かつて集中率は21.5%だと推計していた。
同氏の研究ではより正確な税関連の数字をはじきだそうと、「21世紀の資本論」の著者であるトマ・ピケティ氏とUCバークレーのエマニュエル・サエズ教授が協力した。
コロンビア大学のスティグリッツ氏は所得と富の一点集中が進んたことで、2009年6月にリセッションが終了して以降の個人消費の持ち直しが遅々として進まない現状が説明できるようだと指摘する。
ウォルマート、エルメス「経済システムに見られる問題の一部は、数値で計測された不平等ではなく、本当の意味での不平等の度合いに関連している」と同氏は述べた。
ウォルマート・ストアーズやダラー・ゼネラルなどのディスカウントストアも対象に入れてブルームバーグ・インダストリーズがまとめるマス・マーチャント指数 は、1年半続いた低迷後に80%上昇したが、同期間のS&P500種株価指数の上昇率109%を下回っている。一方、コーチやエルメス、プラダを対象に含むブルームバーグ・インダストリーズのグローバル・ラグジュアリー・グッズ指数は254%の急上昇となり、高級品小売り業者の業績の良さを物語っている。
原題:Undervalued Riches of Top 1% Point to Greater GlobalInequality(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Jeanna Smialek jsmialek1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Carlos Torres ctorres2@bloomberg.netMelinda Grenier
更新日時: 2014/08/08 01:57 JST