【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は7日夜(日本時間8日午前)、ホワイトハウスで緊急声明を読み上げ、イラク北部で勢力圏を広げるイスラム過激派「イスラム国」への限定的な空爆を承認したと明らかにした。イラク北部で孤立する住民の救援や、米国の利益や国民の生命が危険にさられた場合に実施すると説明した。米軍の地上部隊の再派遣は否定した。
オバマ氏はこれまでイラクの政府軍を支援するため、軍事顧問団を派遣したが、空爆を含む軍事介入の判断を先送りしてきた。「イスラム国」への限定的な空爆とはいえ、今回、軍事介入を承認したことはイラク政策の大きな転換となる。
オバマ氏は声明で、イスラム過激派への限定的な空爆を認めた理由に関して「イスラム過激派による大量虐殺への発展を防ぐために行動する必要がある」と強調した。そのうえで「米国はイラクに安定をもたらすために適切な軍事力を支援する」と語った。
米国防総省は過激派の攻撃で孤立している住民らへの人道支援物資を空中から投下したと発表した。米メディアによると、「イスラム国」の攻撃を受けたクルド民族少数派の住民ら40人の子どもが高温と脱水症状のために死亡。4万人は十分な食料や飲料水もないまま北部シンジャールの山頂に避難している状況だ。
これに先立ちアーネスト米大統領報道官は7日の記者会見で、「イスラム国」への対応について「オバマ氏がこれまで明らかにしてきたのは、軍事行動を取る場合は特定の目的で限定的なものだ。地上部隊の派遣を含めた軍事行動はしない」と語った。
クルド系住民らについては「悲惨な人道問題だ。彼らの健康と安全に関して深く憂慮している」と述べ、対応が急務との考えを示した。
一方、国連安全保障理事会は7日、イラク情勢に関する緊急会合を開催し、「イスラム国」によるイラク北部での攻撃を非難する声明を発表した。
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