• 東予

  • 中予

  • 南予

%はの降水確率

HOME > 社説 > 記事詳細
  • [PR]

防衛白書 抑止力強化で平和は守れない 2014年08月08日(金)

 日米同盟を基軸にした抑止力強化を図る政府の防衛政策を、そのまま明文化した危うい内容と言わざるをえない。2014年度防衛白書は、安倍晋三首相が次々と打ち出している積極的平和主義の政策を、漏らさず盛り込んだ。
 集団的自衛権行使容認の閣議決定を「歴史的」と位置づけ、武器禁輸策の見直しなど安全保障政策の転換を明記。必要性の裏付けとして、中国機、ロシア機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)急増などを挙げ、安保環境の緊迫化を強調した。
 周辺事態の深刻さを挙げ、それを理由に防衛力を強化するという手法は、過去に繰り返された軍拡競争の典型だ。そうした事態になる前に必要なのが外交努力だが、首相にはその視点が欠けている。このままでは、日本がアジアの脅威となる恐れさえある。安倍首相には、あらためて、平和外交への注力を促したい。
 白書報告までの安倍首相の前のめりともいえる手法は、自民党内部からでさえ異論が出るほど視野が狭い。この1年の姿勢は、当初から国民の理解を置き去りにした独走との批判も根強いのだ。
 先週の共同通信の世論調査でも、集団的自衛権行使容認への反対が6割に上り、閣議決定については8割を超える人が「十分に説明しているとは思わない」と答えた。首相には重ねて、国民の声に耳を傾ける姿勢を望みたい。
 そもそも集団的自衛権行使容認は閣議決定の段階で、関連法の整備は見通せない状況だ。にもかかわらず、既定路線のごとく白書で内容を追認させた首相の罪は重い。
 先日は広島の平和記念式典の後、被爆者が閣議決定撤回を求めたが、首相は回答を避けた。式典あいさつでは積極的平和主義の理念を省略。政府が「平和の誓いの場になじまない」と本音を漏らしたように、首相の姿勢が平和と対極にあることは自明だ。
 つまり首相の頭には、年末に改定される日米防衛協力指針(ガイドライン)しかないのであろう。そこに反映させる布石として白書でも「アジア太平洋地域で米軍プレゼンスは非常に重要」と持ち上げ、オスプレイ配備を正当化。対米追従の姿勢をさらに鮮明にしている。
 ただ、日米同盟と抑止力強化に特化する方針は、武力を背景にして国際均衡を図る危うい戦略だ。そうした構図が各地で紛争を呼んでいる現実を直視したい。戦後の平和国家としての歩みを、こんな形で葬ってはなるまい。
 白書は「歴史的」と評価するが、平和主義を危うくする「歴史的」な愚行ととらえたい。忘れてはならない。戦争を猛省し、平和憲法を守ってきた歴史こそが、日本の宝であり続けることを。

一覧≫

愛媛のニュース

一覧≫