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■消費税25%、年金開始69歳

 人口減が進む「近未来」の暮らしは、今の人々より厳しくなりそうだ。税金や社会保険料を納める現役世代が急減するため、医療や介護は今の水準を維持できず、現役世代の税や保険料負担も重くなるからだ。

 財務省の試算では、今の税・社会保障制度のままでは、40年の国の借金は約4倍の4千兆円超に膨らむ。借金を返せなくなる懸念から国債が売られ、金利が急騰する「財政破綻(はたん)」が避けられない額だ。

 大和総研の鈴木準主席研究員らは、破綻回避に必要となる最低水準の負担と給付の姿を試算した。

 消費税率は段階的に25%まで上がり、年金がもらえるのは69歳から。すべてのお年寄りには2割の医療費自己負担を求める。それでも、平均的な会社員世帯では給料の30%を社会保険料、10%を所得税などで負担しなければならない。

 鈴木さんは「日本は、現役がお年寄りを一対一で支える『肩車社会』に向かっている」と話す。(野沢哲也)

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■記者は考える 社会、根本から見直しを

 増税や保険料アップでお金を確保し、ハコモノ(施設)を充実させても、肝心の働く人がいない。家族の力も弱まる。これが、人口減が加速するなかで超高齢化を迎える社会保障の近未来図である。

 求められるのは発想の転換だ。従来のように需要にあわせ社会保障を拡充することはできない。需要を抑え、支える力に見合う重みに減らすほかはない。

 例えば介護では、75歳以上でも介護サービスを必要としない高齢者が7割弱もいる。こうした人たちが支え手に回れば、支える力も増す。「介護予防」に力を入れ、元気な高齢者を増やす政策が必要だ。

 支える力を高めるには、誰しもいずれは介護し、介護されるという前提に立った社会の仕組みが欠かせない。突然介護に迫られても、仕事を辞めず働き続けられるように、ワークシェアや介護休業が当たり前の世の中に変える必要がある。そうした仕組みは、子育てしやすい社会にもつながっていく。

 危機から目を背けず、持てる力を出し合う。一人ひとりの働き方、社会のあり方を根本から見直す。その先に人口減の克服の道も見えてくる。(石松恒)

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