FDがなくなる

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フロッピーディスクの生産が停まるそうです。
今や記憶媒体はテラバイトの単位となっていますし、移動用にもUSBメモリーなどがありますから、確かにFBの役割は終わっていますね。

なぜこんなことを書くかというと、実はこのことが織物産地、特に西陣に多大な影響を与えるのです。

西陣の織物は明治になってフランスからジャガード機という織機が導入されて、大量生産が可能となり、飛躍的に発展しました。

織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織上げていきます。
経糸を織機に張って、必要なところの経糸を上げたところに、緯糸が入って、経糸を下ろして織っていきます。

江戸時代は空引き機といって、その織機の上に人がいて必要な経糸を人力で引っ張り上げるというようなことをしていたようです。

ところがジャガード機というのは、その経糸の制御を機械がしてくれるのです。

そのために必要なのが紋紙で、短冊のような細長い紙に穴が開いていて、それが経糸に繋がっている針を上げたり、そうでなかったりします。

図案から、紋図を作り、紋屋さんがそれにしたがって紋紙を作りますが、そのためにピアノマシンという機械を使っていました。

西陣の帯は非常に複雑な柄を織りだすので、その為に必要な紋紙はものによっては1万枚を超えるそうです。
大変な数量で、この紋紙を保存していくための倉庫が必要でした。

西陣の織屋さんは上京区、北区などに不動産をかなり有しているのはそのためでした。

ところが技術革新で、何とその紋紙が不必要になりました。

紋図の情報をFDに読み込ませ、コンピューターが経糸を制御してくれるのです。

これをダイレクトジャガード機といいますが、今西陣の織機はほとんどすべてこの機械に変わっています。

以前の紋紙の情報もすべてFDに読み込んだので、紋紙が必要は無くなってしまいました。
ですから紋紙倉庫もいらなくなって、空いた土地で駐車場やマンション経営をしているところもあります。廃業が続いている織屋さんは、そういうところです。

当時のコンピューターは古いもので、WINDOWSで動くものはずっと後になってからです。

普通ならコンピューターの技術革新と共に、織機も進化していったと思われるのですが、コンピューター社会となり始めたころから、西陣の生産は落ち始め、織機が余り始めたので、とても新しい台を導入するという状況ではなくなってきて、今では新しい動力織機を新しく作ってくれるメーカーもありません。

したがって、ITの技術革新に西陣の織機は追随せず、ずっとFDを使っていたのです。OSもいまだにWINDOWSの古いバージョンで、最近ようやくCD化しようかというような状況です。

FDの生産を停められると、ほぼ9割の織機に影響があると言われています。

当面は買い置きの物で対応できても、いずれ大きな問題となります。

すでに、部分的な変更でSDカードなどで駆動できるような装置などの開発も始まっていますが、どちらにしろ金もかかることですので、どうなるかはわかりません。

ダイレクトジャガード機が開発されてから、西陣の帯は動力でも本当に複雑な組織を駆使した重厚な織物を生産できるようになり、まさに世界最高峰の織物として君臨してきました。

しかし、近年の消費の急激な減退は、その部品の枯渇、道具の生産停止などの事態を生んでおり、どの段階の職人さんも高齢化し、後継者がいないということよりも、物理的理由で上物が生産できなくなるという危機をはらんでいます。

染も織も、本当にこれからの生産は多難な状況となってきました。

流通環境の悪化、生産上の諸問題も山積みで、まさに作り手にとっては四面楚歌で、正念場ですが、これからも廃業が相当な勢いで増えていくことが予想されています。

染もインクジェットの生産がどんどん増えているように、織物も簡単に織れるものだけは残るとしたら、先人の苦労も台無しでしょう。

流通側に作り手への思いやりや視点が無いという現実を考えると、作り手自らが流通環境を変えていくことしか、真の本物が消費者へ届きませんし、そういう動きは加速されることでしょう。

またそうあってほしいと思うものです。

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