マイナビが人事・採用業務経験者171人に行ったアンケートによると、新入社員に対して特にスキル・資格などを求めていないとしながらも、「パソコン・ITスキル」や「英語」は、身につけておいて欲しいと思っていることがわかった。いまやビジネスにおいてITや英語力は不可欠な存在。どんな職種でもパソコン操作やITスキルが求められる。英語も同様で、たとえ国内だけでビジネス展開をしている会社でも、材料や部品を海外から調達するなど、英語が必要になる場面が当たり前のようにある。つまりこれらは社会人にとっての基本スキルということ。人事担当者はそれらの基本スキルを持った上で、財務・会計・金融系資格という専門スキルを求めているのだ。
簿記検定にはいくつか種類があるが、最も有名なのが「日商簿記」だ。これは日本商工会議所および各地商工会議所が年3回実施している検定試験。4級から1級まであり、4級は簿記入門編で、勘定科目に仕分けでき、複式簿記の仕組みが理解できるようになる。最上位の1級になると、大学程度の商業簿記、工業簿記、原価計算並びに会計学を修得し、財務諸表規則や企業会計に関する法規を理解し、経営管理や経営分析も可能になる。このように簿記を理解することは、コスト感覚や自社および取引会社などの経営状態を把握できるようになるなど、経営感覚が身につけられるということ。経理担当者だけではなく、企業で働く人にとって欠かせないスキルなのだ。
先輩たちが簿記資格を取得した理由の第一位は、大学や高校などの授業に組み込まれていたり、その成果を試したりするため。そして第2位が経理の仕事に就きたいなど就活のためだった。また3位の「将来必要になると思って」も含めると、社会人になるために簿記検定を受検する人は4割弱に上った。そのうち、実際に就活に役立ったと答えた人は38パーセント。「就職の面接で話のネタになった」「履歴書でのアピールポイントとなった」という声が多く聞こえた。また中には「外資系企業の就職試験で役立った」という声も。簿記検定を含む財務・会計・金融系資格は学生時代に取得しておきたい資格の第3位にもなっていることから考えても、仕事現場に役立つ資格といって間違いなさそうだ。
英語によるコミュニケーションを幅広く評価する世界共通のテスト。実はTOEICにはTOEICテスト、初・中級者向けのTOEIC Bridge、TOEIC SWテストの3種類があるが、一般的に企業の中で求められるのは、Listening(聞く)、Reading(読む)という2つの英語力を測るTOEICテストの点数だ。最近ではより実践的な英語力(話す力と書く力)測定する、TOEIC SWテストも普及しつつある。TOEICは勉強すればするほど、高い点数がとれると言われている。従って点数は英語を勉強したという努力の証。就活の際には英語力だけではなく、学習継続力や粘り強さなど、パーソナリティをアピールする証明としても活用できる有効な資格だ。
仕事をはじめるまでにTOEICを受験した先輩は、41.2%。そのうち28.9%はTOEICの受験が大学で義務づけられていた、進級の条件になっていたと答えていた。また26.7%の人が「自己啓発・英語力の確認およびスキルアップ」のためと回答。「就活のため」に受験した人も25.6%に上った。また少数だがTOEICが「入社条件・入社までの課題」という回答も。この結果から見ると、今後、より大学などでもTOEICの必修化が進んでいくと、もはや就活などの履歴書記入にあたって、TOEICのスコアを記入することは当たり前になってきそうだ。それを表すように、「毎回、面接でTOEICの点数を聞かれた」と声も。また先輩たちが学生のうちに取得しておけばよかったと思う資格の第一が英語である。早い内からTOEICを受験し、仕事をはじめる時に高いスコアをとれるよう対策しておくことがオススメだ。
ITパスポートは、IT化された社会で働くすべての社会人が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家資格。ITに関する知識だけでなく、経営戦略やマーケティング、会計、法務などの経営全般に関する幅広い知識が習得できるのが特長だ。ITに関する知識はパソコン操作に関する知識だけではない。情報システムやネットワーク、データベースの基礎知識のほか、情報セキュリティや情報モラルなどに関する知識も身につく。いまや業種・職種に限らず、ITの知識は不可欠となっている。企業もITに関する基礎知識を備えた人材を求めるのは必至。面接や履歴書で有効にアピールできる資格なのだ。
今回のアンケートでは221人中、ITパスポートの取得者は10人という結果だった。そのうちの3人は「IT会社への就職やIT職種に就くため」と回答。また基本的なビジネススキルであるITスキルを身につけておきたいということから、ITパスポートを取得した人も3人いた。その他、学校のカリキュラムの一貫、留学するためという回答も。ITパスポートが就職に生かされたと回答した人は4人。その多くが「資格を持っていることが強みとなった」という。またIT企業を中心に就活をした先輩からは、「IT用語が出てきてもちゃんと理解できたのでよかった」という声も聞かれた。ITスキルは学生時代に取得しておけば良かったと思う資格の上位にも挙げられている。IT企業を志望している人はもちろん、志望していない人も、取得しておいて損はない資格といえるだろう。
マイナビのアンケートによると、資格取得のため「スクールなどに通った」という人は9.9%。しかし学校の授業の一貫で勉強したという人を含めると、42.3%になる。それでも独学の66.9%に及ばないが、実は資格ごとに見てみるとその内訳は変わる。例えば簿記検定の資格取得者は「スクールなどに通った」、TOEICは「学校の授業の一貫で」、ITパスポートは意外にも独学が多かった。また独学が向いている、独学だとなかなか進まないという自身の学習タイプでも選択肢は変わってくる。自分に合った方法で資格を取得し、就活に生かそう。