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【芸能・社会】

染五郎 11月「勧進帳」で待望弁慶 祖父初代白鸚の三十三回忌追善で

2014年8月8日 紙面から

 人気歌舞伎俳優の市川染五郎(41)が、11月に東京・歌舞伎座で初めて「勧進帳」の武蔵坊弁慶を演じることが決まった。11月恒例の顔見世興行が祖父の初代松本白鸚の三十三回忌追善として行われるのに際して、由縁の深い演目で、長年の夢を実現させる。

 まさに待望。立役ならだれでもがあこがれる歌舞伎屈指の大役、弁慶。幕開きから1時間強、全編見どころと言っていい人気狂言は、歌舞伎ファンから最も好まれる作品の一つとして知られる。

 七代目市川団十郎が、能の「安宅」を元に創作して1840(天保11)年に江戸河原崎座で初演、人気演目を集めた「歌舞伎十八番」に制定した。その後、劇聖とうたわれた九代目団十郎が洗練して、現在の型に作り上げた。

 その後、多くの俳優が演じてきたが、染五郎の家「高麗屋」では、曽祖父にあたる七代目松本幸四郎が生涯で1600回以上演じて当たり役にしたほか、初代白鸚も約500回、父の九代目幸四郎(71)は1100回演じている。

 七代目は、一世一代と銘打って打ち止め公演をしてからも各方面からの強い要望で何度も復活させ、とりわけ戦後、駐留米軍幹部の要請で演じたことが有名。父の幸四郎は、16歳の時に初めて弁慶を演じ、2008年10月15日には、「勧進帳」に由縁のある奈良の東大寺で1000回の記念公演を行ったほか、2010年7月29日には茨城県土浦市民会館で「勧進帳」の47都道府県公演も達成した。

 こうした姿を見てきた染五郎は、弁慶役こそ自分が歌舞伎俳優として道を歩む原点と自覚して、いつか演じることを夢見てきた。幼いころは、自宅の廊下を花道に見立てて弁慶のマネをして遊んでいたほど。舞台に立つようになってからは、太刀持ち、四天王、義経、富樫と「勧進帳」の主要な役を経験してきた。その積み重ねを生かした新たな弁慶が、いよいよ誕生する。

 ほかの配役、演目は後日発表される。公演は11月1日から25日。

 <初代白鸚> 時代物、世話物、舞踊、新歌舞伎、新作など幅広いジャンルで当たり役を持ち、堂々たる芸風と進取の気風で歌舞伎界をけん引した。「忠臣蔵」大星由良之助、「寺子屋」松王丸、「四谷怪談」伊右衛門など名舞台が語り継がれている。絵の腕前もプロ級だった。文化勲章受賞。1982(昭和57)年1月11日、71歳で亡くなった。

 <充実の染五郎> 昨年4月の歌舞伎座こけら落とし公演の幕開け「壽祝歌舞伎華彩」に人間国宝・坂田藤十郎とともに出演。本興行で最初の舞台に立った。9月には新作「陰陽師」で安倍晴明、今年正月にも新作「東慶寺だより」、5月には明治座で先代猿之助の代表作「伊達の十役」に初役でチャレンジするなど次世代のリーダーとして活躍めざましい。一昨年、舞台からの転落事故で休養を余儀なくされたが、これまで以上に古典、新作、舞踊、復活ものなどに意欲的に取り組んでいる。

 

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