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「すき家」の赤字転落は、これから深刻化する人手不足経済の縮図?

 大手牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは、人手不足による店舗休業に伴って、通期の業績が赤字となる見通しを発表した。同社の赤字転落は、人手不足が深刻化している日本経済の縮図かもしれない。

 同社は2014年8月6日、通期の業績予想を発表した。当初は42億円の黒字を想定していたが、14億円の赤字に転落する見通しとなった。

 同社は牛丼チェーン「すき家」においてアルバイト店員が集まらず、200を超える店舗で一時休業や深夜営業の中止に追い込まれた。
 これによって売上高が減少したほか、深夜時間帯の1人勤務の体制を見直すことによって人件費が増加した。同社ではこうした状況を受けて、牛丼並盛の価格を250円から270円に値上げすることを決定している。

 同社は人手不足の影響がもっとも顕著に出たケースのひとつだが、外食産業は多かれ少なかれ似たような状況に直面している。

 人手不足には様々な要因があるが、もっとも大きいのは、若年層労働力人口の減少である。日本の労働力人口全体は、ここ10年の間、ほぼ横ばいが続いているが、15歳から34歳までの労働力人口は、何と2割も減っている。
 これは、日本全体の人口減少の流れが最初に顕在化したものであり、今後はあらゆる世代において慢性的な人手不足になる可能性が高い。

 慢性的な人手不足は、賃金の上昇圧力につながる。労働者の賃上げが実現するというプラス面はあるが、賃金の上昇が恒常化すると、インフレを加速させるとともに、企業業績を悪化させる。

 さらに、人手不足が続けば、今回のケースのように供給が制限されるという状況になる可能性もある。そうなってくると、せっかく需要があっても、供給不足からそれを埋めることができず、経済成長が阻害されるという皮肉な結果になってしまう。

 今回のゼンショーのケースは、人手不足から供給が制限され、人件費が高騰して業績が低迷、それをカバーするために値上げをするという、人手不足経済の縮図となっている。

 日本は過去20年、デフレと供給過多に苦しんできたが、その風景は一変した。今後は、供給制限とそれにともなう物価上昇という、別な要因での景気低迷を心配する局面となりつつある。

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