広島原爆の日:市長、憲法の重み訴え
毎日新聞 2014年08月06日 10時48分(最終更新 08月06日 18時29分)
広島は6日、米国による原爆投下から69回目の原爆の日を迎えた。戦後70年を目前に集団的自衛権の行使容認について議論が進むなか、平和記念式典で松井一実・広島市長は、日本政府に対し「今こそ、日本国憲法の崇高な平和主義のもとで、69年間戦争をしなかった事実を重く受け止める必要がある」と指摘した。安倍晋三首相はあいさつで「核兵器のない世界を実現する責務がある」と表明したが、昨年に続き、第1次政権時で述べた「憲法遵守(じゅんしゅ)」の文言は盛り込まなかった。
◇首相「核兵器ない世界に」
広島市には早朝、大雨、洪水警報が発令された。式典会場の平和記念公園も強い雨に見舞われたが、夜明け前から多くの人が訪れ、原爆慰霊碑に手を合わせ犠牲者を悼んだ。雨の中の式典開催は、1971年以来43年ぶり。午前8時に始まった式典には、被爆者や遺族ら約4万5000人が参列し、海外からも68カ国が参列した。核を保有する5大国のうち、中国を除く米英仏露の代表がそろった。
松井市長は平和宣言に、子供のころに原爆で大きく人生を変えられた人たちの体験を盛り込んだ。建物疎開の作業中に被爆した少年少女や、壮絶な体験をした孤児、放射線による健康不安で苦しんだ子供を取り上げ、原爆を「温かい家族の愛情や未来の夢を奪い、人生を大きくゆがめた『絶対悪』」だと指摘。各国の政治指導者に対し、核抑止力に頼らず、「信頼と対話による新たな安全保障の仕組みづくりに全力で取り組んでください」と訴えた。また、オバマ米大統領の名前を挙げて、核保有国の指導者に被爆地を訪れるよう呼びかけた。
一方、署名を通じて市民から要望のあった「集団的自衛権」の文言は盛り込まず、核兵器禁止条約の交渉開始を直接日本政府に要望する表現も避けた。過去3回述べた日本のエネルギー政策については触れなかった。
昨年に続いての出席となった安倍首相は、来年開催される核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、「『核兵器のない世界』を実現するための取り組みを、さらに前へ進めていく」と語った。原爆症認定については「一日でも早く認定が下りるよう、今後とも誠心誠意努力する」とした。一方、政府の最近の取り組み以外は、昨年とほぼ同じ表現だった。