学校基本調査:「苦しいなら行くな」保護者の意識変化
毎日新聞 2014年08月07日 22時49分
文部科学省が7日公表した「学校基本調査」では、減少傾向が続いていた不登校の児童生徒数が増加に転じた。不登校の子供を支援する専門家は「いじめ自殺が社会問題になり『それほど苦しいなら学校に行かなくてもいい』と考える保護者が増えた」「競争が激化し、より疎外感を持つ子が増えているのでは」などと、増加の理由を分析している。
2011年、大津市で中学2年の男子生徒がいじめを受けて自殺する事件が起き、いじめ問題に対する社会の関心が高まった。フリースクール「東京シューレ」(東京都北区)の奥地圭子代表は「いじめで極限状況に追い込まれるくらいなら学校には行かなくていい。そう考える保護者が増えたのが理由ではないか」と話す。フリースクール「近畿自由学院」(大阪市城東区)の田中佑弥代表も「学校に戻らずとも、ゆっくり進路を考えればいいとする保護者が最近増えている」と、親の意識変化に注目する。
一方、元小学校教員の増田修治・白梅学園大教授は「子供が常に競争にさらされ、圧力を感じている証拠」と警鐘を鳴らす。「全国学力テストに象徴されるように学校間や自治体間で成績を競う動きが出始め、勉強が苦手な児童生徒は疎外感を感じている。弱者を切り捨てようという社会の縮図が学校にも表れているからではないか」と分析している。【坂口雄亮、三木陽介】
◇所在不明小中学生397人 12年度から3年連続減
今年5月現在、1年以上所在が分からない小中学生(7〜14歳)は前年度より308人少ない397人で、2012年度から3年連続で減少したことが「学校基本調査」で分かった。各自治体の教育委員会と福祉部局、警察が連携を強化し居場所の把握を進めたのが要因とみられるが、同省は「400人近い居所不明者がいるのは問題。政府全体で対策を検討し減らす努力をしたい」と話している。
各学校の在学者数は少子化の影響で小学校660万人(前年度比7万7000人減)、中学校350万4000人(同3万2000人減)でいずれも過去最低。一方、特別支援学校は13万6000人と前年度比3000人増で過去最高を更新した。高校も前年度を上回った。
幼稚園から大学までの女性管理職(校長、副校長、教頭、学長など)は全体の23.3%にあたる2万1827人で過去最高だった。