牧野 洋の「メディア批評」
2014年08月08日(金) 牧野 洋

朝日の「慰安婦問題報道」が浮き彫りにしたメディアの相互チェック機能の欠如

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8月5日付朝日は1面の論説で慰安婦問題報道の誤りを認める

自らの「慰安婦問題報道」を検証した朝日

朝日新聞が8月5日付の1面に「慰安婦問題の本質直視を」と題した論説を載せ、中面では12~13面を使って見開き2ページで慰安婦問題を特集。翌日付でも同じテーマで見開き2ページの特集を組んだ。

注目すべきなのは、これが単なる慰安婦問題の特集ではないということだ。自らの「慰安婦問題報道」を検証する特集であり、過去の報道の一部について誤りを認めている。とりわけ世間の関心を集めたのは、「慰安婦を強制連行した」という日本人男性の重要証言について「虚偽だと判断し、記事を取り消します」と結論した点だ。

この男性は吉田清治氏。暴力で女性を強制連行したと著書や集会で証言し、朝日の紙面上で1982年以降少なくとも16回登場している。1992年に信憑性に疑問を投げかけながらも同氏の証言は訂正されず、1996年の国連人権委員会「クマラスワミ報告」にも強制連行の証拠として採用されている。

新聞界では自らの報道に誤りがあってもなかなか訂正を出さず、出したとしても小さく目立たない程度にするケースが普通だ。なぜ誤ってしまったのか、その経緯を紙面上で説明することもほとんどない。「訂正は恥」という文化が根強いからだ。朝日が1面を使って誤りを認め、その背景について中面で詳しく説明したのは評価に値する。

8月5日付朝日の中面は見開き2ページで検証記事
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