(cache) 月刊 現代農業2014年5月号 マツの枝で藻がホントに消えた!
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マツの枝で藻がホントに消えた!

栃木・柳田 博

筆者(63歳)
筆者(63歳)

 本誌で過去に取り上げた「クリやマツの枝で田んぼの藻を抑える」という話は、根強い人気がある(2005年5月号144ページ、2008年5月号「ちょっといい話」を参照)。藻を枯らすのに農薬を使うのは気が引けるという人は多いようだ。

 今回は新展開。実際に試してみて、藻がホントに出なかったという柳田さんが、体験談とともに写真を送ってくれた。

ウソのような話だけど…

 役場を定年退職してから3年が過ぎました。現在は70aの水稲と転作で夏秋ナス10a、自家用野菜も合わせると約1haの農地を管理しています。

 一昨年の11月、茨城県筑西市で開催された農機具メーカーの展示会に招待を受け、見に行くことになりました。トラクタなどの展示コーナーと一緒に農文協のコーナーもあり、そこで職員の方に「田んぼの水口にマツの枝を挿しておくと、アオミドロ等の発生を防ぐことができる」と教わりました。ウソのような話で、その時は半信半疑で帰ってきました。

本当にノロが出なかった!

 昨年5月。例年のように連休に田植えをしましたが、「マツの枝」のことを思い出し、田植えしたその日、山からとってきた長さ40〜70cmのクロマツの切り枝を、4枚の水田の水口に3〜4本ずつ挿してみました。私の水田では、毎年5月20日くらいにノロ(アオミドロ)が発生します。悪さをされたことはありませんが気になっていました。

 初・中期一発処理の除草剤の散布も終わった5月20日過ぎ。隣の水田のNさんから「博ちゃん(私)の田んぼの水口にマツの枝が挿してあるけど、どうしたんだい?」。そして「ノロが張ってないな」と言われました。

 田植え後から毎朝晩、必ず水回りをしていましたが、Nさんに言われるまで気付きませんでした。確かに私の水田にはノロがなかったのです。大げさに聞こえるかもしれませんが、田が透き通って見えました。農文協の人が教えてくれたのはこれだと思って、本当に驚きました。

水口にクロマツの枝3〜4本を挿して25日後。豚糞を2tほど入れた筆者の水田(11a)は、過去にないくらい透き通り、最後までノロが出なかった
水口にクロマツの枝3〜4本を挿して25日後。豚糞を2tほど入れた筆者の水田(11a)は、過去にないくらい透き通り、最後までノロが出なかった

新鮮なクロマツがよかったか

 それから数日後。近所のAさんに自慢げにこの話をすると、さっそくやってみたようです。結果として、あまり効果が出なかったようです。挿したのが田植え後すぐではなかったためか、それともAさんが使ったゴヨウマツにはノロを抑える成分があまり含まれてないのか、原因は不明です。ただ「田植え後にすぐクロマツを挿したところは効果があった」と、秋の収穫後に聞きました。新鮮なクロマツがよいのでしょうか。

 私が試みた4枚の水田のうち、3枚はハッキリ効果が出ていました。しかし、不思議なことに1枚は効果が薄く、例年よりもノロが少ないかな、といったところでした。クリの枝でも効果があったという人もいると農文協の方から聞いたので、この1枚には5月31日にクリの枝を挿してみました。ノロは増えませんでしたが、現状維持だったようです。

ノロが抑えられなかった水田には急遽クリの枝を挿してみたが、一度出たものを消す効果はないようだった
ノロが抑えられなかった水田には急遽クリの枝を挿してみたが、一度出たものを消す効果はないようだった

今年はみんなで「藻にマツ」を

 私が住む芳賀町南高地区では特別栽培米の生産に取り組んでいます。使用できる肥料・農薬の種類が決まっていますので、アオミドロなどの発生を抑えるモゲトン等の農薬は使えません。また、一般米を栽培していても散布した除草剤がアオミドロの上に乗っかってしまって、薬害が出たり、効果が薄れるとも聞いています。

 農地・水保全管理支払交付金事業に取り組んでいる私たちの地域では、なるべく農薬は使いたくないものです。藻を消すにしても、環境にやさしいこの方法が確立されれば、河川などを汚さずにすみ、環境に優しい農業の実践にもなると思います。クチコミ効果もあり、今年は20軒くらいの農家が取り組む予定です。農地・水の事業としても提案してみようと思っています。

(栃木県芳賀町)

マツの香り成分が効く?

山形大学・芦谷竜矢先生

 以前の『現代農業』では、クリの枝が藻に効くのは「タンニンやフラボノイドが溶け出して、アオミドロの生育や光合成を阻害した」と想定されるという森林総研の大原誠資さんの話を紹介した。今回のマツは、タンニンの量はクリよりも少ないらしい。だとしたらなぜ、マツの枝でも効いたのか――。

「その話なら、大原先生に聞いたことがありますよ」というのは、山形大学農学部の芦谷竜矢先生。

 樹木に含まれる成分について研究している芦谷先生は、タンニンやフラボノイドだけでなく、針葉樹に多く含まれる香り成分「テルペン」にも注目する。

 先生の研究では、クロマツの心材(樹心周囲の色の濃い部分)に含まれるテルペンのうち、「ロンギホレン」という成分が、海の赤潮や、湖の藻類の生長を抑えるのに効果があることがわかっているというのだ。これと同じ現象が柳田さんの田んぼでも起こっているとも考えられる。ただし、テルペンはタンニンなどと違って、水に溶けにくい成分。田んぼに満遍なく広げるには、ある程度の期間、水口に挿すことが必要という。

 また、クロマツと同じくらい赤潮を抑える効果を発揮したのが、スギの樹皮から抽出した成分だそうだ(心材には藻を抑える効果が少なかった)。しかも、スギのほうは抑制だけでなく、濃度によっては細胞を死滅させる効果もあった。藻を抑える枝はまだありそうだ。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2014年5月号
この記事の掲載号
現代農業 2014年5月号

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