イベントレポート「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」(前編)
2014年7月19日(土)にイベントスペース「東京カルチャーカルチャー」にて開催された、「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」。その模様を前・後編に分けてレポートする。 ロボコンとは、NHKのテレビ中継などでおなじみの自作ロボット同士を競い合わせる大会のことだが、“技術力の低い人限定”とは一体どういう事なのだろうか。そもそもロボットを製作するには専門的な知識や技術が必要そうに思えるのだが、“技術力が低い人”の製作したロボットでちゃんと大会として成立するのだろうか。 かすかな不安を感じながら会場に足を運ぶと、そこには制作者たちの初期衝動の塊とでも形容するしかないような、醜くも愛らしいロボット(?)たちが集結していた。
大会前、技術力の低い制作者たちが自慢のマシンについて語り合っている様子。これから戦いが繰り広げられることになるとは到底思えない、ユルい空気が流れていた。
ヘボコンの開催趣旨とは
イベントを主催したのはWebサイト「デイリーポータルZ( http://portal.nifty.com/ )」ライターの石川大樹さん。自身でも生活に役立たないガジェットを工作して記事にしている。 「シャープペンの芯を叩き折る機械」 http://portal.nifty.com/kiji/130617160918_1.htm 「0.2秒でラーメンがすすれる箸」 http://portal.nifty.com/kiji/120406154766_1.htm DMM.Makeでは「ノー・モア・便利」と題して、便利な日用品を不便にする工作を発表している。 https://media.dmm-make.com/maker/179/ 役に立たない工作界のプロフェッショナルといっても過言ではないだろう。
開催の趣旨については、告知ページに以下のように書いている。
普段スポットの当たることのない、技術力の低いロボット同士を戦わせてお互いの技術力の低さを確認する。こんな風変わりなイベント、これまでに開催されたことがあったのだろうか。 当初は公民館の貸部屋でこじんまりと開催するつもりだったが、予想よりも反響が大きかったためこのようなイベントとなったようだ。 希有なイベントにも関わらず、大会には技術力の低さを自称する32人がエントリー。観覧チケットは前売り券が全て売り切れ。当日もキャンセル待ちの列ができるほどの大盛況だった。
大会ルール
競技のルールは以下の通り。 フィールドから相手のロボットを押し出した方が勝利となる、単純明快なルールだ。
エントリーされたロボットをいくつか紹介
さすがヘボコン。一癖も二癖もあるロボットしか出場していない。 全ては紹介しきれないので、その一部を紹介する。
人質ちゃん
制作者:ルーシュ
もともとはアダルトグッズをパーツとして使用したロボットでエントリーしていたのだが、公に出しづらいということで再制作。大会当日の午前3時に完成した。作者曰く、水鉄砲にガムテープで巻かれた女性のフィギュアで人質を表現しているのだとか。確かに物騒な雰囲気は出ている。ほとんど100円ショップに売られているもので構成されているため、総材料費は900円程度とのこと。
技術力が低くてスイッチの実装ができなかったため、ワイヤをねじり合わせて電源を入れる仕様。
チリトリーマアム
制作者:inuro
ラジコン2台をチリトリに取り付け、押し出し勝利を狙ったロボット。全参加者のなかでも数少ない、ネタに走らずに競技内容をもとに本気で闘いにいったデザインだ。
単純に別々のラジコン2台を取り付けただけなので、ふたつのコントローラを使用して操縦する。まっすぐ前進させるのすら困難とのこと。
ストライカー木魚
制作者:おかめ
田宮模型の音センサー歩行ロボット製作キット( http://www.tamiya.com/japan/products/70166sound/ )に木魚を搭載。木魚を叩くとその音に反応して前へと進む。後部に積まれたArduinoは何も接続されていない、ただのデコレーションらしい。本体に搭載されているのとは別に、もうひとつ持参していた木魚を叩くのでも動作するようなので、わざわざ本体に木魚を載せる必要はなかったのではと伺ってみると「言われてみたら、確かに」と作者のおかめさんは答えた。
手近にあったから木魚を使用したとのことだが、木魚がそのへんに転がってる生活なんて和尚さんくらいしか想像できない。ヘボコン出場者には謎が多い。
NABE
制作者:まつながたかふみ
京都の芸大生が4人がかりで操作する鍋型ロボット。鍋本体の移動操作に1人、敵を攻撃するための武器となる野菜を操作する人が1人、ロボットに搭載されたスピーカーから挨拶などの音声を発する操作に1人、最後の一人はホースに息を吹き込んで敵を攻撃する。力を合わせてロボットを操る姿は、どこか戦隊シリーズの合体ロボットを想起させなくもない。
パーツ同士の接着はだいたいガムテープ。
コピーロボット
制作者:すずえり
音が鳴る装置の製作や、トイピアノでの演奏を行うアーティスト、すずえりさん( http://suzueri.org/ )。普段の作品の様子からして全然技術力は低くなさそうなのに、何故かヘボコンに参戦。製作したロボット「コピーロボット」は、タイヤが四つ付いた台車にテープレコーダーが固定されたようなもの。固定具が乾電池を貫通してしまいモーターが稼動しないため、斜めにした木の板の上を滑らせて走らせる、動力を必要としない究極にアナログな一台。
他の出場者のロボットが思っていたよりもしっかりとした出来だったので、自分のも見劣りしないようにLEDを急きょ取り付けたとのこと。
後編へ続く
どのロボットも技術力の低さを全く補おうとしないどころか、むしろまざまざと見せつけてくるようで清々しい。イベントレポート後編では、これらのロボットがどのように闘い、そして散っていったのかをお伝えしようと思う。