世の中の「基準値」には、必ずしも科学的な根拠があるわけではない。単純に、守られていれば安全、超えれば危険というわけではないのだ。あまり知られていない「基準値のからくり」を紹介する。
「ひじき」でがんになる!?
今年4月、日本人間ドック学会が突然、血圧の新たな「基準値」を発表したことは記憶に新しい。
これまでは、上が130以上、下が85以上なら「血圧が高い」と判断され、場合によっては治療の対象になっていたのに、新基準では「上が147、下は94までが正常」となった。この発表を聞いて「ダマされていた」「『基準値』って、そんなにいい加減なものだったのか」と驚いた日本人は多かっただろう。
「『基準値』は、私たちが安全に暮らしていくための重要な指針であることは確かです。しかし『守られていれば絶対安全』という数値ではありません。
人間ドック学会のニュースでも分かるとおり、基準値は、誰かの都合やその時の成り行きで、あくまで人間が決めているもの。本来、科学的な根拠だけで決めることができず、必ず恣意的な部分が入るのです」
そう語るのは、東京大学公共政策大学院特任教授で、リスク評価を専門とする岸本充生氏だ。
岸本氏ら4人の科学者が共同で執筆した『基準値のからくり』(講談社ブルーバックス)が話題を呼んでいる。そこでは、そもそもの決め方自体が「そんな事情だったの?」と驚くような基準値の裏話が明かされている。我々が、科学的な根拠があると信じていた基準値は、実はまるでテキトーに決められているケースも多いのだ。
健康に関するものと並んで、身近な基準値で真っ先に気になるのは、食品に関するものだろう。調べてみると、「食の安全」の基準値も、驚くほどいい加減に決められていた。
「たとえば『ひじき』です。日本人には健康食としてお馴染みですが、ひじきを『危険な食品』としている国は多く、カナダの食品検査庁は'01年にひじきの消費を控えるように勧告しており、イギリスの食品基準庁も'04年に同じ勧告を行いました。香港、オーストラリアもこの流れに追随しています」(『基準値のからくり』の共著者で農業環境技術研究所主任研究員の永井孝志氏)
では、ひじきの何が危険なのか。それはひじきに含まれる「無機態ヒ素」だと言われている。
無機態ヒ素は、海藻などに含まれる、「発がん性がある」と国際がん研究機関が認定した物質だ。近年、ひじきにはその無機態ヒ素が大量に含まれていることが明らかになり、とくに問題視されている。
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