日中首脳会談が実現しそうな習近平の5つの事情

2014年08月08日(金) 長谷川 幸洋
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経済面では問題続出

それから、シャドーバンキング問題である。

このところ問題は一見、沈静化したように見えるが、根本的な解決には至っていない。各地の新興開発地が軒並みゴーストタウンになっているように、不動産バブルはとっくに弾けた。

不動産開発の原資になっていたのは、高利回りにつられて理財商品を買った投資家たちの資金である。ハイリターンの源は不動産バブルだったのだから、それが破裂すれば、高利回りの約束を守るすべはない。つまりシャドーバンキングも破綻する運命にある。

そうなると、いずれ中国は経済面でも苦境に陥る可能性が高い。そのとき米国と緊張を高め、日本も敵に回している状態は望ましいかといえば、そうではないだろう。

最後の5つ目が鶏肉問題だ。

使用期限切れの鶏肉を平気で出荷していたのは会社ぐるみだったと判明している。日中両国政府は8月6日から北京で食の安全に関する緊急実務者協議を開いた。協議の枠組みは2008年の毒入りギョーザ事件の後、設けられていたが、外交関係が悪化したのに伴って事実上、休眠状態だった。

それが再開された背景には、中国側に「この際、日本と政府間協議のパイプを開きたい」という秘めた意向があるとみていい。「災い転じて福となす」ではないが、不祥事を機に話し合いのとっかかりを見つけたい、という意図がにじみ出ているのだ。

実はこの協議、日本側は水面下で菅義偉官房長官の主導で始まった。少なくとも日本側に「まずは鶏肉問題を入り口に話し合うのであれば、相手の面子をつぶさないだろう」という深謀遠慮があったのは間違いない。

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