日中首脳会談が実現しそうな習近平の5つの事情

2014年08月08日(金) 長谷川 幸洋
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周永康に勝利も、国内テロは止まらない

次に周永康問題だ。

先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40006)で指摘したように、この事件は習一派と周永康一派の権力闘争が本質である。習指導部が宣伝している「反腐敗(腐敗撲滅)」の闘争とは、一般国民向けのアピールを狙った大義名分にすぎない。中国の歴代指導者と党エリートたちは多かれ少なかれ、立場を利用して莫大な資産を築いている。習近平も例外ではない。

そうみれば、今回の摘発は習総書記が周と背後にいる大物である江沢民元総書記との権力闘争に勝利しつつあることを物語っている。習近平にとって、ライバルと目の上のたんこぶが消えつつあるわけで、それだけ自分の裁量権が広がる話である。

これまでは国内の政治的安定を確保するために対日強硬路線をとらざるをえなかった側面があった。だが、自分を攻撃する敵がいなくなれば、強硬路線を修正する余裕が出てくる。習指導部は11月のAPECまで周永康事件がどういう展開になるか、ずばり言えば、ライバルたちから反撃がないかどうかを慎重に見極めるはずだ。

3つ目は新疆ウイグル自治区を中心として国内で頻発しているテロだ。

これも産経新聞が伝えたが、7月末にカシュガル地区ヤルカンド県で起きた暴動について、死者は当初の100人規模ではなく「少なくとも2000人」(世界ウイグル会議の議長発言)という情報がある。正確な人数はともかく、今回の暴動は1989年の天安門事件を思い出させるような規模の騒乱だった可能性がある。

そうだとすると、習指導部にとって重大事件だ。これまでも国内でテロや騒乱に対して鎮圧作戦を繰り広げてきたが、どうにも止まらないところまできた感がある。習近平としては、国内の締め付け強化こそが最重要案件になりつつある。

国内問題にエネルギーを注ごうとすれば、日中関係を含む対外関係はできるだけ鎮静化させたほうが都合がいい。

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