【ジュネーブ=原克彦】中国によるレアアース(希土類)など鉱物資源の輸出制限問題を審査してきた世界貿易機関(WTO)の紛争処理上級委員会は7日、日米欧の提訴内容をほぼ全面的に認める最終報告書を公表し、中国の敗訴が確定した。環境や天然資源の保護が輸出規制の理由だとしてきた中国は今後、輸出制限を撤廃するなどの是正を求められる。
最終報告書は中国の輸出制限について、国内産業を恣意的に優遇する政策だと断定。「環境や天然資源保護のためなら、国内生産を制限する代替措置をとるべきだ」と判断した。WTOは29日に開く紛争解決機関会合で正式に採択する予定。WTO協定は天然資源の保全や環境保護が目的の場合を除き、輸出制限や輸出税をかけることを禁じている。
日米欧は2012年に中国を提訴。中国が2006年からレアアースとモリブデン、タングステンの3品目に5~25%の輸出税を課し、10年からは輸出数量も減らしたのを受け、WTOの協定に違反すると主張していた。今年3月には第一審に当たる紛争処理小委員会(パネル)が日米欧の勝訴となる判断を下したが、中国が最終審に当たる上級委に上訴していた。
中国は輸出制限を通じて資源の価格引き上げを狙ったほか、日本に対しては沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船事故に対する外交カードとしても利用していた。
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