日本オラクルは2014年8月5日、モバイルアプリ開発・運用プラットフォームを発表した。製品名は、「Oracle Mobile Suite」と「Oracle Mobile Security Suite」。ユーザー数が多く、マルチプラットフォーム対応が必要なアプリを開発する企業に売り出す。
発表したモバイル開発プラットフォームは、いわゆるMEAP(Mobile Enterprise Application Platform)に分類できる製品だ。業務システムと連携したモバイルアプリを開発する際に必要となる開発環境や、ゲートウェイ、管理ソフトを提供する。
主に2つの製品で構成する。1つは、モバイルアプリの開発と、業務システムとのつなぎ込みを支援する「Oracle Mobile Suite」。もう1つは、アプリの配布や、セキュリティの確保を容易にする「Oracle Mobile Security Suite」だ。
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Oracle Mobile Suite
アプリの開発統合基盤と、スマートデバイス向けJavaランタイム
Mobile Suiteは、モバイルアプリの統合開発基盤。アプリ開発に必要な開発環境とライブラリを提供する。特徴は、ワンソース・クロスプラットフォームを謳っている点だ。Javaで書いたソースコードを、iOSでもAndroidでも実行できるため、OSごとに異なる言語を使って、個別にアプリを開発する必要がない。
開発者は、オラクル独自のJavaフレームワークを使ってソースコードを記述、Javaのランタイムとセットにして、スマートフォンやタブレットに配布する。各デバイス上では、Javaの仮想マシンを稼働させて、その上でJavaのソースコードを実行する仕組みだ。アップルと協力し、iOS上で稼働するJavaのランタイムも用意した。
ただし、クロスプラットフォームのアプローチにはデメリットもある。OSのUI特性を犠牲にする場合があるからだ。例えば、iOSとAndroidではメニューの配置やボタンを押した時の反応が異なる。画面を統一するためには、こうした差異をある程度埋めざるを得ない。結果としてユーザーに慣れない操作を強いる可能性がある。
こうした課題を解決するため、Mobile SuiteはOSごとに画面デザインを差し換えられるようにした。iOSやAndroidの標準的なデザインをテンプレート化。それらを当てはめると、アプリの画面配置やインタラクションを各OSの標準に沿ったものにできる。アプリのロジックには手を入れる必要はない。バージョンアップによって、OSの画面デザインが変更された場合は、追随してテンプレートを提供する予定だ。
ゲートウェイ
スマートデバイスアプリと業務システムを仲介する。実態は「Oracle Service Bus」。従来、ESB(Enterprise Service Bus)として提供してきたものだ。Mobile Suiteでは、スマートデバイスと業務システムを接続するゲートウェイとして利用する。モバイルアプリとの親和性を高めるため、新たにRESTとJSONをサポートした。
データグリッドソフトの「Oracle Coherence」を内蔵。利用設定をオンにすると、キャッシュ機能を利用できる。例えば、コンシューマ向けアプリを配布する場合は、従来よりもアクセス数が増える可能性がある。こうした場合に、Coherenceを使って基幹システムのデータをキャッシュ、アクセスを捌くといった使い方ができる。
Oracle Mobile Security Suite
いわゆるMAM(Mobile Application Platform)機能を提供する。Mobile Suiteで開発した業務アプリをカプセル化、デバイス内の他のアプリと隔離して、業務データを不正に覗き見たり、持ち出したりできないようにする。デバイスが紛失、盗難に遭った場合は、遠隔操作でアプリを消去して、業務データが第三者の手に渡るのを防ぐ。
業務システムとの通信を暗号化したり、社内の認証サーバーと連携して、ユーザー管理を一元化したりできる。アプリを配布する社内専用のマーケットも構築可能だ。
Oracle Mobile Suiteは、10ユーザー、1アプリケーションの場合で500万円から(税抜)。Oracle Mobile Applicaton単体で購入する場合、10ユーザー、1アプリケーションで11万9600円から。銀行・証券のコンシューマ向けサービスや、公益サービスの設備保守、製造業の工程管理などのセグメントに重点的に売り込む。
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